「CODE8 コード・エイト Part II」
(原題:CODE 8: Part II )2024年2月よりNetflixから配信されたカナダ製のSFスリラー。前作(2019年)と同様に特筆すべき出来ではない。しかし、パート1に比べて作品のクォリティは落ちておらず、その点あまり不満を覚えずに最後まで付き合うことが出来た。テレビ画面で鑑賞するには、これぐらいのライトな建て付けの方がフィットしていると思う。...
View Article「悪は存在しない」
国際的には高く評価される濱口竜介監督だが、私は彼の作品を良いと思ったことは一度も無い。とはいえ本作は上映時間が106分と、前作「ドライブ・マイ・カー」(2021年)みたいな犯罪的な長さではなく、社会派っぽい題材を扱っている点をも勘案して鑑賞することにしたのだ。しかし、やっぱり結果は“空振り”である。何のために撮られた映画なのか、その意図すら判然としない。...
View Article「エドガルド・モルターラ ある少年の数奇な運命」
(原題:RAPITO)これが史実であることに驚くしかない。西欧における宗教、あえて言えば一神教が掲げる価値観(教義)と、それがもたらす影響力について思い知らされる一編だ。さらにはその“原理主義”とも言える教えと、一般市民の普遍的な哀歓との確執をも掬い取っているあたりも、映画が平板な出来になることを巧みに防いでいる。観る価値はあると思う。...
View Article「人間の境界」
(原題:GREEN BORDER)観終わって、目の前が真っ暗になってしまうような印象を受けた。監督はポーランドのアグニエシュカ・ホランドだが、本作は彼女の師匠であるアンジェイ・ワイダが1957年に撮った「地下水道」に通じるものがある。あの映画は徹頭徹尾マイナスのモチーフを繰り出して題材の深刻さを強力に訴えていたが、この「人間の境界」も、そこで扱われている“現実”には慄然とするしかない。...
View Article「正義の行方」
ドキュメンタリー映画としてはかなりの力作であることは分かるが、どこか釈然としないものを感じる。たぶんそれは、重要なことが描かれていないからだろう。もちろんドキュメンタリーとはいえ作者が伝えたいテーマは存在しており、フィクショナルなテイストの介在は避けられない。そこを扱う題材とどう折り合いを付けるかが、作品の成否の要素になる。本作の場合、そのあたりがどうも微妙なのだ。...
View Article「碁盤斬り」
本格時代劇らしい雰囲気は良く出ていた。各キャストのパフォーマンスも申し分ない。しかし、脚本の練り上げが足りない。加えて、この監督の持ち味が十分に発揮されたとも思えない。全体的に、TVシリーズの総集編のような印象を受ける。ただ客の入りは悪くないようで、多くの観客が日本映画に対して抱く期待感は“この程度”でクリアされるのだろう。...
View Article「シティーハンター」
2024年4月よりNetflixから配信。けっこう楽しめた。実は私は週刊少年ジャンプに連載されていた北条司による原作を、すべてリアルタイムで読んでいる。だからこのネタの面白さを少しは分かっているつもりだ。その観点からも、本作はかなり健闘している方ではないかと思う。1時間44分という長すぎない尺も、この手のシャシンとしては的確だ。...
View Article「関心領域」
(原題:THE ZONE OF INTEREST)かなりの高評価を得ている作品で、私もこの非凡すぎる設定に大いに興味を惹かれ、期待して鑑賞に臨んだのだが、どうにも気勢の上がらない結果に終わってしまった。端的に言って、これは“策に溺れた”ような印象を受ける。題材は良いのだから、もう少し訴求力のあるモチーフを繰り出すべきだったと思う。...
View Article「ミッシング」
題材はシビアなものだし、主演女優の大奮闘は印象に残る。しかし、作品自体の訴求力はそれほどでもない。これはひとえに、物語の焦点になるべきキャラクターよりも、脇の面子や付随するエピソードの方が数段興味深いからだ。それが却って主人公の存在感を希薄なものにしている。脚本の練り上げが足りていないか、あるいは作り手の狙いがドラマツルギーの常道と外れた地点にあったからだと思われる。...
View Article「泣かないで」
(原題:ONLY WHEN I LAUGH )81年作品。あまりにもメロドラマっぽい邦題に腰が引けてしまうが、80年代の演劇界および映画界において活躍したニール・サイモンのシナリオによるシャシンで、この作家が得意とする非凡なキャラクターの造型とハートウォーミングな筋書きが冴えている。第54回アカデミー賞にて3部門でノミネートされ、第39回ゴールデングローブ賞では最優秀助演女優賞を獲得している。...
View Article「人間の約束」
86年作品。鬼才・吉田喜重監督の、端倪すべからざる実力を十分に堪能できるシャシンだ。題材としては高齢化問題を取り上げているが、そこに留まらず普遍的な人間性や社会性の深いところを突いてくる。決して観て楽しい作品ではないものの、世の中の在り方に関して考察を加えたくなる訴求力を備えた重量級の映画であることは確かだ。...
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