(原題:GET OUT )何の変哲もないB級ホラーである。本国アメリカではかなりヒットしたそうだが、その理由があからさまに透けて見える点も、大いに脱力する。まあ、キワ物映画として名高い(?)「パラノーマル・アクティビティ」シリーズなどを手掛けたプロデューサーが一枚噛んでいるらしいので、さもありなんという感じだ。
主人公クリス・ワシントンはニューヨークで写真家として活動している黒人男性。白人女性ローズ・アーミテージと交際中だが、週末に山奥の片田舎にある彼女の実家に招かれる。歓迎はされるものの、使用人が黒人ばかりであることに彼は違和感を覚える。しかも、彼らの言動がおかしい。翌日、近所の者達を集めたパーティーに出席したクリスは、その中に一人黒人がいるのを見つけ、話しかけて写真を撮る。すると相手は突然鼻血を出しながらクリスに“ここから出て行け!”と言い放つ。尋常ではない雰囲気を感じ取ったクリスは、ローズと一緒にこの村から逃げ出すことを決意する。
クリスとローズがアーミテージ家に向かおうと田舎道を車で走っていると、急に鹿が飛び出してきて衝突する。何やら思わせぶりなモチーフだが、実はあまり伏線にはなっていないことが分かり呆れた。映画が中盤に差し掛かると、この映画のアウトラインは予想が付く。序盤に、クリスの友人である空港警察官がクローズアップされるのでコイツが終盤にもストーリーに絡んでくるのだろうと思ったら、その通りになるのだからガッカリだ。
ホラー演出も目新しさは無く、ケレン味たっぶりのカメラワークと効果音で観客を驚かすというパターンの繰り返し。それでも本国の観客の耳目を集めたのは、背景に根強い人種差別問題が横たわっているからだろう。
ローズの家族および村人達は、黒人なんか人間だとは思っていない。しかしアフリカ系民族の身体能力は買っており、その点だけが“利用価値がある”と決めつけている。ちょうどこれは“黒人は全員足が速くて、歌と踊りが上手い”というレベルの低いステレオタイプの見方と同じで、それを何の考えも無く踏襲しているあたり、いい加減観ていてバカバカしくなってくる。さらに、後半逆襲に転じるクリスが暴力の限りを尽くすのも、“やっぱり黒人は粗暴だ”といった底の浅い認識が全面展開しているようだ。
監督はジョーダン・ピールなる人物だが、取り立てて才能があるようには思えない。ダニエル・カルーヤにアリソン・ウィリアムズ、ブラッドリー・ウィットフォード、ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ、キャサリン・キーナーといったキャストはまったく馴染みが無く、このあたりもB級感が漂う。