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Channel: 元・副会長のCinema Days
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「ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ」

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 (原題:THE FOUNDERS)とても面白かったが、果たしてこういう映画を作って良いのかという疑問が渦巻く。少なくとも日本では絶対に映画会社から製作許可が下りず、企画段階どころか関係者が構想を少し口にしただけで速攻で潰されるようなネタだ。この題材をあえて取り上げるという、ハリウッドの懐の深さというか、いい加減さというか、そんな彼の国の事情に改めて感心してしまう。

 1954年、シェイクミキサーのセールスマンであるレイ・クロックは、50歳過ぎても風采が上がらず、あまり成果の望めない営業活動を地道に続けていた。ある日、彼はあまり売れないはずのこの商品を大量発注したハンバーガーショップがカリフォルニア州に存在することを知る。興味を持った彼がその店を訪ねてみると、画期的なシステムでハンバーガーを効率的に売りさばく、店主のマクドナルド兄弟の斬新な手腕に驚嘆する。

 クロックは彼らにフランチャイズ・ビジネスを持ちかけ、いつの間にか共同経営者として居座ってしまう。クロックの強引な遣り口によってチェーン店は急拡大するが、グローバルな成功よりも美味しいハンバーガーを安く提供することを第一義的に考えるマクドナルド兄弟とクロックとの対立が、次第に表面化してくる。世界的なファストフードのチェーンストアの黎明期を描く実録物で、もちろん登場するキャラクター達は実在の人物だ。

 とにかく、クロックの外道ぶりに圧倒される。しがない営業マンながらドス黒い野心を胸に秘め、チャンスを見つけると目的のためには手段を選ばない暴挙に出る。ハンバーガーが美味いかどうかには興味は無く、各都市の一等地を買い漁って出店し、加盟店から見合ったリース料を徴収してボロ儲けしようという“不動産投資ビジネス”に邁進する。

 マクドナルド兄弟からは商標権を奪い取って“創立者”を名乗り、糟糠の妻を簡単に捨てて部下の嫁さんを寝取る。事業を進める上で手を組むビジネス・パートナーも、最終的には“単なる手駒”としか思っていない。

 では観ていて不快な気分になるのかというと、それは違う。これほどまでに露悪的に“ぶっちゃけて”しまうと、一種の爽快感を覚えてしまうのだ。たぶんクロックは、人を人とも思わないサイコパスなのだろう。しかし、そんな常軌を逸した人物が大成功してしまう、血も涙も無い資本主義の実相をこれほどまでにヴィヴィッドに描き出した作品はそう無いと思う。

 ジョン・リー・ハンコックの演出は快調にノリまくり、主役のマイケル・キートンは鬼気迫る表情で守銭奴を楽しそうに演じる。ニック・オファーマンやジョン・キャロル・リンチ、ローラ・ダーンといった他の面子も良い仕事をしている。

 冒頭にも書いたが、実在の大企業の“黒歴史”をエゲツなく描く本作のスタイルは、日本では実現不可能だ。余計な“忖度”に絡め取られ、描きたいネタも描けない膠着した状況が横たわっている。もっとも、こういう硬派な題材を取り上げようという映像作家自体が、あまり存在しないという事実があるのかもしれない。

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