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Channel: 元・副会長のCinema Days
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「クリクリのいた夏」

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 (原題:Les Enfants du marais )99年作品。本国では200万人を動員したというヒューマンドラマ。ほのぼのとしたノスタルジアと各キャストの好演で肌触りの良い映画になったことは認めるが、じゃあそれ以外に何があるのかというと、少し首を傾げてしまう。物足りない出来だ。

 1930年代初頭のフランスの田舎町。5歳の女の子クリクリの父リトンは、少しメンタルが弱くて皆から疎まれていた。そんな彼をいつも助けるのが、流れ者の復員兵ガリスだった。クリクリはガリスに懐いていたが、好きだった洋館のメイドの娘マリーが結婚するという知らせを聞き、町を出ることを考える。ところがリトンと過去に因縁のあった前科者のジョーが町にやってくるに及び、ガリスはこの親子のために一肌脱ぐことになる。監督は「殺意の夏」(83年)などのジャン・ベッケル。

 老齢になったクリクリが子供の頃を回想するという形式で描かれるが、どうもこの方式は上手くいっていない。誰だってそうだが、思い出は美しいものなのだ。もちろん回想が何か別の能動的なテーマのモチーフになっていれば様子は変わってくるが、本作はひたすら過去を美化するだけ。

 とにかく、出てくる者達が御伽噺のキャラクターみたいに地に足が付いていないのだ。金持ちでエレガントなアメデ、ボートの模型を孫のために作ったぺぺとその孫ピエロ、可愛いだけのマリーetc.ならず者のジョーでさえ、実は“いい人”だったりする。何より、第二次大戦を間近に控えた時代の空気が希薄である。イヴ・ロベール監督の「プロヴァンス物語」二部作(90年)のように“過去は戻らず、郷愁は郷愁でしかない”という醒めたタッチの方が個人的には納得できる。

 リトン役のジャック・ヴィルレをはじめジャック・ガンブラン、アンドレ・デュソリエ、ミシェル・セロー、イザベル・カレーといったキャストは芸達者で、ジャン=マリー・ドルージュのカメラによる映像、ピエール・バシュレの音楽も良いのだが、映画が軽量級に過ぎるためにあまり印象には残らない。もっとも、これは好みの問題であり、このようなカラーの作品を好む観客も大勢いるのだろう。だからこそ、本国では大ヒットしたのだ。

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