面白くなかったのは、取り上げたネタが不適切だったからだ。さらにストーリー展開は主人公達の独善ぶりを強調するばかりで、観る側に少しもアピールするものがない。ひょっとして今後もシリーズ化を狙っており、パート3に向けての“繋ぎ”としての扱いに過ぎないのかもしれないが、いずれにしろ評価は出来ないシャシンだ。
横浜に住む平田家の主・周造は、自家用車での外出を毎日楽しみにしている。ところが最近は車に凹み傷が目立つようになった。このまま事故でも起こされては大変だと、家族は高齢の周造に運転免許を返上させようと説得を試みる。しかし、親父に進言する役どころを互いに押しつけようとしている家族の魂胆を見透かした周造は完全にヘソを曲げてしまい、埒があかない状態に。
そんなある日、周造の妻の富子が海外旅行に出かけることになり、思いがけず“期限付きの独身”に戻った周造は、かねてより懇意にしていた居酒屋の女将かよを乗せて車を走らせる。その途中で高校時代の同級生・丸山と偶然に再会を果たす。不遇な生活を送っている丸山を励ますために周造は有志だけの同窓会を催すが、酔いつぶれた丸山を一晩泊めるハメとになる。ところが、朝起きてみると丸山は息をしていない。かねてより患っていた心臓病が急激に悪化してしまったのだ。ちょうど周造の運転免許の件で集まっていた家族一同は大騒ぎになるが、やがて身寄りの無い丸山の“野辺送り”をするべく奔走するようになる。
そもそも“死”を主要モチーフとして採用する必要があったのだろうか。いくらコミカルな味付けをしようと、あまりにもヘヴィ過ぎて笑えない。さらに平田一家の丸山に対する“上から目線”が気になる。丸山は若い頃に事業に失敗して以来、まったく良いところが無く生涯を終えてしまった。対して平田家は、トラブルメーカーの周造を擁してはいるが、横浜青葉区に一戸建てを構えて、三世代仲良く暮らしている。
運転免許を返上してどうのこうのという話も、所詮は運転は周造の道楽に過ぎない。過疎地での、免許を返上したくても出来ない老人達の状況に比べると“いい気なものだ”としか思えないのだ。さらに火葬場での悪ふざけ以外の何物でもない展開を観るに及び、ウンザリしてしまった。確かに独居老人や福祉の問題は重要だろう。しかし、それはこんなホームコメディで茶化して扱うハナシではないはずだ。
演出はメリハリが無く弛緩し、ギャグも空回り。山田洋次は出来不出来の差が大きい作家ではあるが、今回は“ハズレ”である。周造役の橋爪功をはじめ、吉行和子に西村雅彦、夏川結衣、中嶋朋子、妻夫木聡、蒼井優、小林稔侍、風吹ジュンといったキャストは賑やかだが、どれも気合いが入っていない。特に橋爪はリアルに今“家族はつらいよ”という状態なので、余計に情けなく見えてしまう。製作されるであろう第三作は、今回出番が少なかった吉行扮する富子あたりがクローズアップされるのだろうか。