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Channel: 元・副会長のCinema Days
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「ダイ・ハード/ラスト・デイ」

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 (原題:A GOOD DAY TO DIE HARD)このシリーズを続けていくことが、もはや“惰性”でしかなくなったことを、如実に示している。思えば、第一作はアクション映画の方法論に新機軸を打ち出した画期的な作品だった。舞台を限定し、主人公が徒手空拳で巨悪に立ち向かう。それを支えるだけの綿密な脚本と練り上げられたキャラクター設定があったことも確かだ。続く第二作もそのスタイルは踏襲されていたが、第三作からは普通の刑事物に成り果ててしまった。

 パート1が「タワーリング・インフェルノ」でパート2が「大空港」、ならばパート3を「ポセイドン・アドベンチャー」にしようとしたところ、設定が「スピード2」に転用されてしまった・・・・という話もあるが(笑)、いずれにしろ独自性を失った時点で当シリーズの存在価値が希薄になったと言っていいだろう。

 ニューヨーク市警の刑事ジョン・マクレーンは、CIAに勤めている息子のジャックがモスクワで警察当局に身柄を確保されたと聞き、身柄を引き取りに行く。しかし、ジャックが出廷する予定の裁判所で爆破テロが発生。重要な証言するはずだった大富豪を守るために賊と戦うジャックを助けるべく、大立ち回りを演じる。

 息子と疎遠になり、今でもしっくりいかない親子関係を物語のアクセントにしようとしていることは分かるが、深く突っ込む事なんてハナから捨象されている。あとは派手な活劇シーンの連続のみ。ただし、第一作が作られた時代とは違い、どんなに荒唐無稽に思われるシーンもCGで実現可能だということが認知された今、それだけではポイントは稼げない。

 緊張感を付与するためには映像技術ではなく、それを取り仕切る演出力であるはずだが、監督のジョン・ムーアはアイデアも力量も無いようで、華々しく展開する画面とは裏腹に、白々とした空気が流れる。

 だいたい、市警の職員風情が荒仕事を請け負うがごとく勝手に海外に“出張”して、程度を知らない大暴れをするというシチュエーション自体が噴飯物だ。普通の人間ならば100回は死んでいるような事態に直面してもシレッと生き残り、最後はにこやかに凱旋するというのだから、いい加減バカバカしくなってくる。

 ブルース・ウィリスはいつも通りの大根パフォーマンス(爆)、息子役のジェイ・コートニーも別にどうということはない。悪役の皆さんもスゴんでいる割には迫力が無い。ラスト近くにはあのチェルノブイリも出てくるが、これがまあ文字通り“取って付けた”ようなモチーフでしかないのも脱力してしまう。

 取り柄といえば、上映時間が短いことだろうか。昨今は娯楽活劇編の分際で無駄に長いシャシンが散見されるが、本作においては“分をわきまえている”という意味で、評価してもいいのかもしれない(笑)。

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