全く期待していなかったので、たとえ締まらない内容でも大して腹は立たない。それどころか、あまり退屈しないで最後まで観ることが出来た。昔のプログラム・ピクチュア、または2本立て公開のメインでない方の作品だと割り切れば、スクリーンに対峙していてもストレスは無い。
日本の食品メーカーに勤めるヨンウンは、上司から来期の雇用契約を結ばないと告げられる。同時に恋人からもフラれ、落ち込んだまま沖縄への最後の出張に出かけるが、その間に会社は不祥事を起こして破綻。沖縄に足止めを食らうハメになる。ひょんなことで現地の外国語教室の韓国語講師を引き受けることになった彼だが、そこで韓国語をマスターしなければ勤めている旅行会社をクビになってしまうシングルマザーのさくらと出会う。彼女は韓国の取引先の社長が来日するまでに韓国語を習得する必要があり、ヨンウンに個人レッスンを頼む。思わぬ事態に狼狽えるばかりのヨンウンだが、懸命に頑張るさくらの姿にやがて心を動かされる。
設定が強引なら、展開もベタだ。くだんの韓国人の社長の来日が繰り上がってますますピンチに陥るさくらをフォローするために、ヨンウン及び外国語教室のスタッフ達が奇策を考案するが、これが新たな騒動を引き起こすことが中盤の見せ場であろう。しかし、演出が脱力系なのでさっぱり盛り上がらない。ヨンウンとさくらの関係がどうなるのかは予定調和だが、突っ込んだ描写もなく平板なまま推移する。
監督の朝原雄三は別の作品ではソツのないところも見せるのだが、本作に限っては気分が乗っていないような印象を受ける。時に時系列を戻す際の、テープを巻き戻すような処理は実に古臭い。
ならば全然観る価値はない映画なのかというと、そうでもない。それは、主演の2人がけっこう“絵になる”からだ。ヨンウンに扮するのは“SUPER JUNIOR”とかいうK-POPグループに属するイェソンなる男。決して飛び切りのイケメンというタイプではなく、見た目は優しく真面目そうだが優柔不断で煮え切らないという、ラブコメの定番スタイルながら嫌みがなく好感度が高い。
さくらを演じるのは佐々木希で、相変わらず演技はぎこちないが、デビュー時に比べて進歩しているのが見て取れる。もっとも他の若手俳優に比べると上達のスピードはかなりゆっくりしているとは思うが(笑)、それが本作では努力を惜しまないヒロインのキャラクターに合致していて、違和感がない。ひょっとしたら彼女は、目立つルックスとは裏腹に“遅咲き”の女優になるのかもしれない。
佐藤正宏やふせえりといった脇の面子も悪くない仕事ぶりだ。沖縄の名所旧跡も多数登場し、観光気分も味わえる。なお、エンド・クレジットの後に“イェソンと希の韓国語講座”が勝手に始まったのには面食らった(爆)。