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Channel: 元・副会長のCinema Days
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「シン・ゴジラ」

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 世評通り、楽しめる映画だった。もちろん、完璧な出来かと問われれば答えに窮する。巷間で取り沙汰されている“ある重大な欠点”(笑)の他にも、細かく見ていけば辻褄の合わない点も散見されよう。しかしながら、これらの瑕疵を差し引いても本作の存在感は屹立している。本年度の日本映画を代表する快作だと断定したい。

 東京湾で大量の水蒸気が噴出する等の異常事態が発生。政府は原因を海底火山か熱水噴出孔の発生だと断定するが、内閣官房副長官の矢口は巨大生物の存在を想定する。矢口の説は政府閣僚から一蹴されるものの、間もなく巨大生物が多摩川河口から上陸。少なからぬ被害が発生するが、巨大生物は数時間で海へと戻った。次なる襲来に備え、矢口を責任者に据えたプロジェクトチームが発足。巨大生物をゴジラと名付けて対策を練る。やがて前回の倍近い大きさとなったゴジラが、鎌倉市に再上陸して東京都心に向かって歩き始める。果たして、矢口と政府首脳はこの難局を乗り切ることが出来るのか・・・・という話だ。

 何より、過去のゴジラ映画に対する“関連性”を完全に断ち切り、仕切り直した形で素材を扱っていることがポイントが高い。昭和29年の第一作の再映画化という見方も出来るが、ゴジラを“人類の脅威そのもの”として明確に設定し、その上で新たなドラマをフリーハンドで構築しようとしている、その姿勢が潔い。

 さらに、感傷や色恋沙汰等のウェットなテイストを極力排除し、有事に対するメソッドを着々と煮詰めていくという、ドラスティックな展開が実に気持ち良い。最初は及び腰だった政府も、厳しい現実を前にして各構成員がそれぞれの立場を最大限活かして職務を全うしようとするが、その“集団としてのパワー”がゴジラを追い詰める原動力になっていることが如実に示される。惹句にもある通り、これは“ゴジラ対日本”の図式を高いインパクトを伴って描出したものだと言える。

 監督は樋口真嗣だが、総指揮の庵野秀明の力量が前面に出ていると思う(樋口だけでは、これだけの仕事は無理だろう ^^;)。展開に淀みがなく、観る者を最後まで引っ張っていく。矢口役の長谷川博己をはじめ、驚くほど大勢の多彩なキャストが動員されているが、約一名を除いて立派に仕事をこなしている。

 で、その“約一名”の存在こそが前述の“重大な欠点”そのものなのだが、言うまでもなくそれは米国大統領特使を演じる石原さとみだ。何かの冗談ではないかと思うほど自己陶酔型の大芝居を披露している。しかも、アメリカ政府の人間という設定ながら話す言葉の怪しいこと(爆)。日本政府のスタッフに扮する竹野内豊の方が、遙かにサマになる英語を話している。もうちょっと何とかならなかったのだろうか。

 映像面ではバトルシーンは万全ながら、ゴジラの造形は上出来とは言いがたい。CGをハリウッドあたりに“外注”した方が上質のものに仕上がっただろう。ただし、この拙さが不気味さを倍加しているという見方も出来るので、一概に欠点とは言えない。とにかく、観て良かったと思える娯楽作であった。大ヒットしており、続編も考えられるが、その際は十分に練り上げて欲しい。

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