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Channel: 元・副会長のCinema Days
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「ゲッタウェイ」

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 (原題:The Getaway )72年作品。東宝系の劇場で行われている“午前十時の映画祭”の中の一本として観た。サム・ペキンパー監督作品としては「ワイルドバンチ」(69年)や「わらの犬」(71年)ほどの切れ味は無い。凡庸なアクションものである。ただ、かなりヒットしたらしい。突出した内容ではなくても、そこそこヴォルテージが高くて気軽に楽しめる映画の方が一般的な観客にはアピールするのであろう。

 テキサスの刑務所からドク・マッコイが出所してきた。銀行強盗の罪で懲役10年のはずが、わずか4年で突然釈放されたのだ。実はこれには“裏”があり、地方政界の実力者ベニヨンが保釈金を引き受ける代わりに、彼のために銀行を襲って大金をせしめるという取引が成立していた。ドクは妻キャロルとベニヨンが派遣したルディとジャクソンの2人の殺し屋から成るチームを作り、綿密な計画を練る。



 当日、襲撃計画は成功したかのように思えたが、ジャクソンが守衛の1人を射殺してしまったことからプランが狂い始める。ルディは足手まといのジャクソンの口を封じた後、金を独り占めすべくドクの命も狙う。一方、ドクとキャロルはトラブルの末にベニヨンを殺し、金を持って逃走を始める。ベニヨン一派の残党が後を追い、警察はドクを指名手配。ルディも執念深く追いかけてくる。果たしてドクとキャロルは逃げ切れるのだろうか・・・・という話で、ジム・トンプソンの同名小説の映画化だ。

 銀行強盗のシークエンスはあまり迫力が無い。中盤の、金の入ったバッグをめぐる寸借詐欺師との攻防も、大して盛り上がらない。カーチェイスの場面はパンチ不足。クライマックスのドンパチも、いつものペキンパー監督ならばもうちょっと上手くやれたはずだ。それでも、主役を張るスティーヴ・マックィーン御大の貫録と、この映画の競演が縁で彼と結婚することになるアリ・マッグローとのコンビはスター性が十分で、拙い展開でも何とか場を保たせている。

 一番面白かったエピソードは主人公たちの逃避行ではなく、ルディが押し入って人質に取る獣医夫婦の有り様だ。ダンナは怖がってばかりいるが、カミさんの方はそんな弱腰のダンナに早々に見切りをつけ、あろうことかルディと懇ろになってしまう。このあたりの外道な展開には、思わずニヤリとした。

 南部の風景は薄っぺらいが、作品のカラーにはマッチしている。ベン・ジョンソンやアル・レッティエリといった悪役の面構えも良い。クインシー・ジョーンズの音楽も要チェックである。

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