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雑誌「暮しの手帖」について。

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 今年(2016年)4月に始まったNHKの朝の連続ドラマ「とと姉ちゃん」は、雑誌「暮しの手帖」の創刊者の一人である大橋鎭子の生涯を題材にしている。「暮しの手帖」は昭和23年に創刊。それから出版元の経営が危うくなる等の紆余曲折があったが、現在でも刊行されている。一応婦人向けの雑誌なのだが、実を言うと私が十代の頃、この雑誌の密かなファンだった(笑)。

 とはいっても、リアルタイムで購読していたわけではない。昔、実家の押入れの奥にけっこうな冊数の古本が仕舞われており、ヒマな時にページをめくっていたのである。どうしてこの雑誌にハマったのかというと、他とは違う屹立したポリシーがあったからだ。それは、徹底的に読者の立場を考慮するというものだった。借り物の価値観や商業ベースのトレンドを廃し、軽佻浮薄なハヤリ物にも背を向け、編集者が真に読者にとって有用だと思った情報だけを提供しようとしている、その姿勢に感心したものだ。



 そのスタンスが最大限に発揮された企画が“商品テスト”であった。市場に出回っている家庭用品や食品を一度に集め、実際に品質を確かめようというものだが、その手法は具体的かつシビアで、妥協を許さない。余計なバイアスを回避するために、原則として雑誌には他社の広告を載せないという徹底ぶりだった。個人的にウケたのはエアコン(当時はルームクーラーという名称が一般的だった)のテストで、そのエントリー品目の中にわが家で使っていた機種も入っており、当の使用者も気が付かないような微妙な操作性の特徴をズバリと指摘していたのには驚くしかなかった。

 他にはガスオーブンや電気カミソリ、冷蔵庫や炊飯器、さらにはインスタントラーメンやレトルトカレーまでがテストの対象になっており、読んでいるだけでも面白い。どんなに有名なメーカーの人気商品であろうが、テスト結果が芳しくなければ、容赦なくこきおろす。時には“消費者をバカにしている。即刻販売を停止せよ!”という、過激なフレーズが誌面を飾ることさえあった。

 残念ながら2007年を境に“商品テスト”は中止になっている。理由は人手とコストらしいが、買い物下手な“B層”が幅を利かせる昨今だからこそ、復活させてほしいと思う。

 さて、もしもこの“商品テスト”がピュア・オーディオ機器を対象に実施されたらどうなるのだろうか。おそらく全機種に対し“消費者のことを考えていない。市場に出す価値なし!”と裁定されるだろう。サイズと重量がやたら大きいくせに、取っ手も付けられておらず、使いまわしに苦労する。発熱と消費電力がバカにならない。接続端子の大きさと位置がデタラメだ。ツマミが小さく安っぽい。操作スイッチのレスポンスが悪い。そもそも“スピーカーケーブルの被膜を取り去って芯線を出す”などという“高難度”の作業を使用者に強いること自体が大間違いetc.とにかくボロクソに叩かれるはずだ(大笑)。

 話が逸れたが(^_^;)、とにかく大橋鎭子と共同発行者の花森安治が現役だった頃の「暮しの手帖」は、端倪すべからざる存在感があったのは確かなのだろう。“商品テスト”以外でも、大橋のエッセイや質量とも圧倒的な読者投稿欄など、読み応えのあるコーナーが多かった。

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