94年にイギリスのデヴォン州で結成されたバンド、ミューズが2012年に発表した6枚目のアルバム「ザ・セカンド・ロウ 熱力学第二法則」は世界的なセールスを記録したが、内容もそれを裏付けるように中身の濃いものだ。
正直言って、以前は個人的にこのグループは評価していなかった。初期のアルバムなんか、大仰なわりにはどこか“抜けた”部分が目立ち、長時間のリスニングには耐えられなかったものだ。ところが前作の「ザ・レジスタンス」は良い感じで洗練度が増してきており、本作に至ってはスキのない仕上がりを見せている。とにかく、巨大な音のカーテンが目の前に広げられている感じで、聴く者を圧倒する。
意地の悪いリスナーからは“クイーンとU2をミックスしたような音じゃないか”という声も上がるだろうが(笑)、このスケールの大きさ、このメロディとハーモニーの完成度は、誰でも一目置くはずだ。先のロンドン五輪の公式テーマ曲になった「サヴァイヴァル」をはじめ、どのナンバーも粒ぞろい。低域を効かした録音も万全で、これは買わない理由は見当たらない。
最近、八代亜紀がジャズのスタンダードナンバーを歌った「夜のアルバム」というディスクが評判になっているが、ジャズ歌手からキャリアをスタートさせたという割には演歌色が強くて、個人的にはあまり評価できない。対して同じ演歌系シンガーでも青江三奈は一味違う。93年にアメリカでレコーディングされたこの「THE SHADOW OF LOVE」は、日本人歌手が挑んだジャズのスタイルの中でも、おそらく屈指のものに数えられるだろう。
「クライ・ミー・ア・リヴァー」や「イッツ・オンリー・ア・ペーパー・ムーン」といったお馴染みのナンバーに加え、彼女の十八番である「伊勢佐木町ブルース」と「本牧ブルース」の2曲も、英語の歌詞を付けてジャズ・アレンジで収録されている。 改めて聴くと、青江の声は実に良い。ハスキーで華やかでありながら、軽やかなのだ。しかも都会的でクール。演出過多で圧迫感のある八代亜紀のヴォイスとはまったく異なる。
また、バックの演奏も正調のジャズというよりフュージョン寄りの展開を示しているところも興味深い。マル・ウォルドロンやフレディ・コールといった大物のサポートも受け、伸び伸びと歌っている様子が見て取れる。残念ながら彼女は早々と世を去ってしまったが、もしも今でも健在ならば素晴らしい仕事をやり続けていたことだろう。
ベルクのヴァイオリン協奏曲といえば、スーク&アンチェル盤とかジェルトレル&クレツキー盤等が挙げられるが、私が気に入って聴いていたディスクはギドン・クレーメルがコリン・デイヴィスと組んだものである(オーケストラはバイエルン放響)。録音の面からもこれ以外は不要とも思っていたほどだが、ここにきてその“牙城”を脅かすようなCDがリリースされた。イザベル・ファウスト&アバド盤である。
ファウストのヴァイオリンは実に耽美的だ。ちょっと聴くと“若干線が細いかな”とも思えるが、闊達で蠱惑的なプレイで聴く者を“深み”に引きずり込む。しかも響きの美しさは決して表面的なものではなく、確かなテクニックに裏打ちされ、この曲の持つ仄暗い情熱を遺憾なく表現している。
同時収録のベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲も目覚ましい音色の美しさが堪能できる秀演で、このカップリングは“お買い得”と言うしかない(笑)。また録音も優れている。なお、バックをつとめるモーツァルト管弦楽団というのはあまり聞かない名前だと思ったが、イタリアのボローニャを本拠地とする“メンバーが18歳から26歳限定”という楽団らしい。クラウディオ・アバドが音楽監督を担当しているが、本ディスクを聴く限りかなりの腕前であることが分かる。今後もチェックしていきたいオーケストラだ。
正直言って、以前は個人的にこのグループは評価していなかった。初期のアルバムなんか、大仰なわりにはどこか“抜けた”部分が目立ち、長時間のリスニングには耐えられなかったものだ。ところが前作の「ザ・レジスタンス」は良い感じで洗練度が増してきており、本作に至ってはスキのない仕上がりを見せている。とにかく、巨大な音のカーテンが目の前に広げられている感じで、聴く者を圧倒する。
意地の悪いリスナーからは“クイーンとU2をミックスしたような音じゃないか”という声も上がるだろうが(笑)、このスケールの大きさ、このメロディとハーモニーの完成度は、誰でも一目置くはずだ。先のロンドン五輪の公式テーマ曲になった「サヴァイヴァル」をはじめ、どのナンバーも粒ぞろい。低域を効かした録音も万全で、これは買わない理由は見当たらない。
最近、八代亜紀がジャズのスタンダードナンバーを歌った「夜のアルバム」というディスクが評判になっているが、ジャズ歌手からキャリアをスタートさせたという割には演歌色が強くて、個人的にはあまり評価できない。対して同じ演歌系シンガーでも青江三奈は一味違う。93年にアメリカでレコーディングされたこの「THE SHADOW OF LOVE」は、日本人歌手が挑んだジャズのスタイルの中でも、おそらく屈指のものに数えられるだろう。
「クライ・ミー・ア・リヴァー」や「イッツ・オンリー・ア・ペーパー・ムーン」といったお馴染みのナンバーに加え、彼女の十八番である「伊勢佐木町ブルース」と「本牧ブルース」の2曲も、英語の歌詞を付けてジャズ・アレンジで収録されている。 改めて聴くと、青江の声は実に良い。ハスキーで華やかでありながら、軽やかなのだ。しかも都会的でクール。演出過多で圧迫感のある八代亜紀のヴォイスとはまったく異なる。
また、バックの演奏も正調のジャズというよりフュージョン寄りの展開を示しているところも興味深い。マル・ウォルドロンやフレディ・コールといった大物のサポートも受け、伸び伸びと歌っている様子が見て取れる。残念ながら彼女は早々と世を去ってしまったが、もしも今でも健在ならば素晴らしい仕事をやり続けていたことだろう。
ベルクのヴァイオリン協奏曲といえば、スーク&アンチェル盤とかジェルトレル&クレツキー盤等が挙げられるが、私が気に入って聴いていたディスクはギドン・クレーメルがコリン・デイヴィスと組んだものである(オーケストラはバイエルン放響)。録音の面からもこれ以外は不要とも思っていたほどだが、ここにきてその“牙城”を脅かすようなCDがリリースされた。イザベル・ファウスト&アバド盤である。
ファウストのヴァイオリンは実に耽美的だ。ちょっと聴くと“若干線が細いかな”とも思えるが、闊達で蠱惑的なプレイで聴く者を“深み”に引きずり込む。しかも響きの美しさは決して表面的なものではなく、確かなテクニックに裏打ちされ、この曲の持つ仄暗い情熱を遺憾なく表現している。
同時収録のベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲も目覚ましい音色の美しさが堪能できる秀演で、このカップリングは“お買い得”と言うしかない(笑)。また録音も優れている。なお、バックをつとめるモーツァルト管弦楽団というのはあまり聞かない名前だと思ったが、イタリアのボローニャを本拠地とする“メンバーが18歳から26歳限定”という楽団らしい。クラウディオ・アバドが音楽監督を担当しているが、本ディスクを聴く限りかなりの腕前であることが分かる。今後もチェックしていきたいオーケストラだ。