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Channel: 元・副会長のCinema Days
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「バカヤロー!2 『幸せになりたい。』」

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 89年作品。森田芳光が総指揮と脚本を担当するオムニバス・ドラマ「バカヤロー!」シリーズの第二弾である。4つのエピソードのうち前半の2つはどうでもいいが、残りの2つは印象深い。特にその頃の時代性をヴィヴィッドに切り取っているあたりは評価したいと思う。

 本田昌広監督によるパート1「パパの立場もわかれ」は、小林稔侍扮する旅行代理店社員が仕事と家庭の板挟みになる話。鈴木元監督によるパート2「こわいお客様がイヤだ」は、深夜のコンビニエンス・ストアでアルバイトしている男(堤真一)が自分勝手な客達に翻弄される話。いずれも現時点で内容を忘れかけているということは、大した出来ではなかったのだろう。だが、パート3の岩松了監督の「新しさについていけない」はけっこう笑えた。



 郊外の建売り住宅に引っ越してきた若夫婦は、新しい家電品のことに関してほとんど知識が無く、かなり苦労する。しかも、隣に住む家電品オタクの男がいろいろと難癖を付けてくる。耐えきれなくなった旦那の方が“バカヤロー!”と叫ぶのだが、その後の夫婦の独白が泣かせる。実は彼は地元では無頼の“新しもの好き”だったのだ。それが慢心している間に時代に取り残されてしまった。バブル期でハヤリ物のサイクルが短くなった世相をよくあらわしている。

 それにしても、主人公がレコード針を買いに行ったら“今はCDの時代ですよ”と電器屋からバカにされるくだりは観ていて苦笑した。それから20年以上経って、再びレコードが見直される時代がやってくるなんて、あの頃は誰も思わなかっただろう。演技面では、藤井フミヤと荻野目慶子の小市民的カップルがイイ味を出している。

 パート4の成田裕介監督による「女だけトシとるなんて」は厳しい話である。主人公は26歳のOLだが、交際相手が煮え切らないため嫌気がさして仕事を辞め、故郷に帰る。ところが、地元の会社は東京帰りを煙たがり、親は見合いを勧める。仕方なく再就職を決意するが、面接では年齢や結婚のことばかり問題にされ、彼女はついにブチ切れる。

 景気が良く皆が浮かれていたあの時代の中にあっても、ちょっと世の中のメインストリームから外れると、途端に逆境に陥ってしまうことを容赦なく描いて圧巻だ。好況の裏にはすでにドラスティックな格差社会が存在していたのだと、改めて思う。

 ヒロイン役の山田邦子は好演だが、正直言って本当の“美人女優”を持ってきた方がインパクトがより大きくなっただろう。とはいえ、主人公の境遇を象徴するかのように、彼女が持っていた風船が空に消えてゆくラストは秀逸だった。

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