(原題:En duva satt pa en gren och funderade pa tillvaron)少しも面白くない映画である。聞けば第71回のヴェネツィア国際映画祭で大賞を獲得したらしいが、有名アワードを取った作品が必ずしも良い映画ではないことを、今回も痛感することになってしまった(←こんなこと何度も書いている気もするが ^^;)。
中年セールスマンのサム(ニルス・ウェストブロム)とヨナタン(ホルガー・アンダーソン)は、パーティグッズを売って国中を歩き回っている。どう考えても売れるはずのない商品で、いつまで経ってもうだつの上がらない二人だが、行く先々でいろいろと変わったことに遭遇する。レストランの中がいつの間にか戦時中にタイムスリップしたり、立ち寄った店には18世紀のスウェーデン国王・カール12世率いる軍隊がやってくる。それでも冴えない二人の旅は続く。
監督はスウェーデンの奇才と呼ばれるロイ・アンダーソンだが、私は彼の作品を観るのは初めて。なるほど、異能と言われるだけあって作風はかなりユニークだ。寒々とした画面の中に、過度にカリカチュアライズされた登場人物達が無愛想に寸劇みたいなものを演じるエピソードが脈絡無く積み重ねられている。しかも、その中には大元のストーリーとは関係の無いものも散見される。
全部で39のパートに分かれているが、いずれもワンカットで撮られていて、しかもカメラはほとんど動かずクローズアップも無い。まあ、別にこのようなスタイルを採用してはイケナイとは言わないが、それが映画としての興趣にまったく貢献していないのだから呆れる。
意味が分からず、ちっとも笑えず、まともなメッセージも無く、大向こうを唸らせるような映像的喚起力もないシークエンスの積み重ねでは、1時間40分の上映時間が途轍もなく長く感じられるばかりだ。映画が始まってから早々にイビキをかいている者も少なからずいたようだが(笑)、それも当然だろう。しかも、こんなシロモノを撮るのに4年もの時間を費やしているというのだから呆れる。
絶賛している評も少なからずあるが、どれも“どこが面白いのか”について具体的に語っていないように思える。奇を衒った映画のエクステリアだけを見て勝手に盛り上がっているだけのようだ。シュールな作品を持ち上げて何某かインテリになったような気分が味わいたい層に相応しい映画だと言えそうである。