立て続けに公開される園子温監督作だが、これはその中では一番つまらない。手抜きばかりが目に付き、明らかにスタッフが仕事に身が入っていないような出来映えである。製作する上でそれなりの努力した挙げ句に失敗するのならばまだ許せるが、最初から“やっつけ仕事”で済まそうとしているその魂胆が気に入らない。
愛知県の東三河地区に住む鴨川嘉郎(染谷将太)は、運命の出会いを夢見ながらもつい目先のエロいことに気を取られてしまうヘタレな高校生である。ある日目覚めると、突然人の心の声が聞こえるようになっていた。また、女友達の美由紀をはじめ数人が特殊能力を発動させるようになったことが判明する。
超能力研究者の浅見教授は、嘉郎ら超能力に目覚めたエスパーたちを招集。悪のエスパー達による迫り来る世界的危機を阻止するために、彼らの団結が必要であることを強調する。しかしながら、相変わらず嘉郎たちはエロいことにしか興味を示さない。果たしてこれで世界の危機を救えるのだろうか。
SF仕立ての脱力コメディではあるが、だからといっていい加減に作って良いということにはならない。ふざけるときは徹底的に真面目に(?)やるべきだ。
冒頭に嘉郎が夢想する“運命の人”との出会いのシーンが流れるが、これが何の捻りも無いまま劇中で何度もリフレインされるのにはゲンナリした。敵の勢力は実質的に一人であり、これが全人類に影響を与えるパワーを持っているというふれ込みながら、いまだ愛知県の片隅でくすぶっている理由がイマイチよく分からない。
だいたい、主人公の“生前の記憶”が事件解決の決め手になるような設定になっているのならば、他のエスパーの存在感は限りなく薄くなってしまうではないか。この“生前の記憶”とやらが明かされる終盤になってくると、ドラマは一気に停滞。工夫も何も無い説明的シークエンスが漫然と展開されるだけで、観ている側は眠くなってくる。
園子温の演出は撮影の際に酒でも入っていたのではないかと思えるほど低調。ドラマにリズム感も無ければ出てくるギャグもすべて不発。もっとも、同監督の“趣味”である若い女のパンツの跳梁跋扈だけは今回はパワーアップ。美由紀役の池田エライザや嘉郎が恋心を抱く紗英に扮する真野恵里菜をはじめ、みんな盛大にパンツを見せまくる。しかし見せ方が一本調子なので、中盤からは飽きてしまう。
他の出演者はあまり印象に残らず、強いて挙げればスゴイ身体の担任教師役の清水あいりと変態エスパーの冨手麻妙ぐらい。なお板野友美がチョイ役で出てくるのだが、セリフが棒読みの上にコイツだけがパンツを見せていない(爆)。これだからAKB一派は嫌いだ(笑)。