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Channel: 元・副会長のCinema Days
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「ジュラシック・ワールド」

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 (原題:Jurassic World)第一作のようなインパクトを求めるのは間違いだ。あれは“誰もやらなかったこと”を最初にやったから評価が高かったのであって、あらゆるメディアに恐竜のCGが氾濫している昨今、映像だけで驚かせるのは無理がある。だからそのあたりを割り切って“怪獣映画”にしてしまったことは潔いと思う。脚本は万全とは言えないが、随分とヒドい大作映画ばかりが揃った今回のサマーシーズンの娯楽作の中ではマシな方だろう。

 “ジュラシック・パーク”の惨劇から22年が経ち、イスラ・ヌブラル島は大手デベロッパーのマスラニ社に買い取られ、新たな大規模アミューズメントパーク“ジュラシックワールド”がオープン。世界中から毎日2万人もの観光客が訪れる人気スポットとして成功を収めていた。だが、絶えず目玉商品を打ち出さないと経営は安定しないという懸念から、経営陣にとっては心の休まる日は無い。遂には禁じ手の遺伝子操作によって、新種のハイブリッド恐竜インドミナス・レックスを生み出すに至る。

 一方、運営責任者のクレアはパークに甥のザックとグレイを招くが、忙しくて彼らに構うヒマもない。彼女は2人の世話をアシスタントに任せ、インドミナス・レックスの飼育に関してヴェロキラプトル(ラプトル)の調教師であるオーウェンとの打ち合わせに専念していた。そんな中、インドミナスが飼育エリアから脱走する。高い知能と特殊能力を持つこの新型恐竜に、パーク側は対応できない。やがて全島を巻き込んでのパニックに発展する。

 厳重に監視していなければならない新種の恐竜に易々と“脱獄”を許してしまうパーク側の体制は噴飯物だし、そもそも責任者のクレア自身が持ち場を放り出して元カレのオーウェンとよろしくやっていること自体が言語道断だ。ザックとグレイの両親が離婚寸前だの何だのというパートも不要。2人がジャングルの中を逃げ回っていたら、いつの間にか昔の“ジュラシック・パーク”の施設に辿り着いていたという筋書きも唐突に過ぎる。

 しかしながら、往年の東宝特撮映画を思わせる怪獣同士の肉弾戦を迫力ある映像で見せられると、多少の瑕疵は許してやろうかと思ったのも事実。特にインドミナスとラプトルが“会話”によって意思疎通を図る場面は、かつての東宝の「怪獣大戦争」や「怪獣総進撃」あたりのワンシーンを思い出してニヤリとしてしまった。

 クリス・プラットとブライス・ダラス・ハワード、ヴィンセント・ドノフリオ以外は馴染みの無いキャストばかりだが、俳優に対するギャラを積み上げるよりも、その分を特殊効果に振り分けた方が良いとの判断だろう。コリン・トレヴォロウの演出は特筆される箇所は無いが、大きな破綻も見当たらず、及第点には達している。本国ではヒットしており、続編製作は間違いのないところ。特に評判が悪くなければ、次作も観に行きたい。

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