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Channel: 元・副会長のCinema Days
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「リアル鬼ごっこ」

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 呆れて笑ってしまった。先日観た「ラブ&ピース」に続く園子温監督の奇天烈劇場だが、あの映画に存在した感動ポイント(のようなもの)は今回皆無。徹底的に自身の下世話な嗜好のみで塗り固められた悪ノリ作品である。決して広く奨められるようなシャシンではないが、“こういうものだ”と見切った上で接すれば、あまり腹も立たないだろう。

 女子高の修学旅行のバスの車中で、詩を書くのが好きな生徒・ミツコは、車中でペンを落として拾おうと身をかがめた。するとその瞬間、突風が吹いてバスの上半分が吹き飛ばされ、ミツコ以外の乗客すべての上半身と下半身が真っ二つになるという惨劇が起こる。突風はバスを降りて逃げ惑う血塗れのミツコをなおも追い回し、居合わせた行楽客も巻き添えにする。山中に逃れた彼女はいつの間にか見知らぬ高校に辿り着く。すると驚いたことに、周囲の生徒たちはミツコを知っており、何事も無かったかのように接してくるのだった。

 一応、山田悠介の同名小説を元にはしているが、内容は完全なオリジナルだ(そもそも、園監督は原作を読んでもいないという)。ミツコは正体不明の“鬼”から逃げ回るうちに、いつの間にかケイコやいづみという別の女に“変身”していく。要するに全体がこの世のものではない“別の世界”のハナシであり、それはたぶんアレじゃないかと思っていたら、終わり近くになってその通りだったというのが示されるのだから脱力してしまった。

 しかしながら、起承転結じみたものを期待するような映画ではないので、ストーリーがどうのと目くじらを立てるのはお門違いである。これは作者の個人的な好みである“若い女のパンツと血しぶきの跳梁跋扈”をボーッと眺めるためだけの作品なのだ(爆)。終盤でヒロインが“私たちで遊ぶな!”と絶叫するシーンがあるが、それは言うまでもなく園監督自身に向けられている。だが、そう言い募っても“遊んでどこが悪いんじゃ! ワシの勝手だぁ!”と開き直られるのがオチなのだが・・・・(笑)。

 ミツコを演じるのは映画初主演のトリンドル玲奈で、けっこう頑張っているようだが、演技面では未熟そのものなのでさほど印象に残らず。これは同じくヒロインに扮している篠田麻里子と真野恵里菜についても言える。惹句によれば“キャストは女ばかり”ということだったが、ラストで斎藤工が変態っぽい役で出てきたのには失笑してしまった。他の出演者の中では、ミツコの友人に扮した桜井ユキの不敵な面構えと身体のキレの良さが印象に残る。今後も注目していきたい。

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