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Channel: 元・副会長のCinema Days
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「レッド・バイオリン」

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 (原題:The Red Violin)98年カナダ作品。本作で第72回アカデミー賞作曲賞を獲得したジョン・コリリアーノの音楽は素晴らしい。とにかく官能的で目覚ましい美しさに溢れ、聴く者を恍惚とさせる求心力を発揮。それだけで入場料のモトは取った気になる。

 モントリオールのオークション会場で往年の名器“レッド・バイオリン”が売りに出される場面から始まり、映画はこの楽器が作られた1681年に遡る。高名なバイオリン職人ブソッティは妻子を失った夜、迸る情念をバイオリンの製作に向ける。1972年、そのバイオリンはオーストリアの修道院に渡り、天才児と呼ばれたカスパーが手にする。彼は驚くべきパフォーマンスを連発してセンセーションを巻き起こすが、無理が祟り若くして世を去る。



 1893年、イギリスの作曲家で演奏家のホープがこのバイオリンを手に入れ、インスピレーションを得て大きな成果を上げる。しかし、何かに魅入られたように彼は自ら命を絶ってしまう。1965年、文化大革命の最中にある上海に渡ったバイオリンは、あやうく廃棄されそうになるが、持ち主のシャンはバイオリンを町の音楽教師に託す。そして現代、中国政府がこのバイオリンをオークションに出品。鑑定を担当したモリスには、ある計画があった。

 映画自体はスケールの大きなオムニバス風大河ドラマという感じで、見応えのあるシーンも少なくない。特に中国の文革の場面など、欧米の映画であることを忘れるくらいに描写に力がある(バイオリン・ケースを火に投げる場面は強烈だ)。しかし、舞台が現代に戻ってからの結末の持って行き方は拍子抜け。もっと破天荒な展開でアッと言わせて欲しかった。

 フランソワ・ジラールの演出は最後のパートを除けば悠然としたタッチで重量感を醸し出す。アラン・ドスティのカメラ、フランソワ・セグワンの美術、いずれも良好。キャストではブソッティ役のカルロ・チェッキとシャンに扮したシルヴィア・チャンの熱演が光る。対して狂言回し役みたいなモリスを演じたサミュエル・L・ジャクソンはイマイチ。別に彼でなくてもやれた役だ。なお、イギリスのパートで出てきたグレタ・スカッキは、やっぱり“ヌード要員”であった(笑)。

 バイオリン独奏はジョシュア・ベル、オーケストラはエサ・ペッカ・サロネン指揮のフィルハーモニア管弦楽団という手堅いスタッフを集めているのも注目で、サントラ盤も要チェックである。

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