(原題:THE HANDMAID'S TALE )89年作品。快作「ブリキの太鼓」(79年)で一世を風靡したドイツの鬼才フォルカー・シュレンドルフがアメリカ資本を加えて作成したシャシンだが、どうもパッとしない。イマジネーションの枯渇が甚だしく、同監督は以後長い低迷期に入る。
環境汚染等で大半の女性が不妊となった近未来、崩壊したアメリカ社会の後に成立したギリアッド連邦では、わずかに残った妊娠可能な女性は全員支配者層仕える“侍女”となるように強制されていた。若い女ケイトは国外に逃亡しようとしたが失敗。夫は処刑され、幼い娘は支配者層に奪われて、侍女としての教育を受けるため施設に収容されてしまう。出所後彼女は司令官のフレッドとセレナの夫妻のもとに送り込まれ、妊活に励まされる。だが、一向に妊娠する気配が無く、セレナは彼女に運転手のニックと関係を持つことを命じる。ところが2人は愛し合うようになり、共に脱出計画を練るのだった。
この映画で描かれる近未来は、過去の作品でさんざん描かれた典型的なディストピア。新味はまったく無い。フェミニズム的な趣向を打ち出している点がミソかもしれないが、大して効果も上がっていない。SF小説の世界ではもっと思い切った近未来の設定はいくらでも見られると思う。
気勢の上がらない設定に引きずられてか、シュレンドルフの演出も気合いが入らない。赤い制服を着た侍女たちの群れをはじめとする新奇なモチーフも、何やら薄っぺらでワザとらしい。支配者達から逃れる際のサスペンスが盛り上がるわけでもなく、謎解きの知的興奮も無い。
舞台はアメリカであるはずだが、どう見てもヨーロッパである点も不満。だいたい、環境汚染でほとんどの女性が不妊になったのに、男の方は別に異常がないというのはオカシイではないか。納得のいくような説明があってしかるべきである。
主演のナターシャ・リチャードソンをはじめフェイ・ダナウェイ、エイダン・クイン、エリザベス・マクガヴァン、ロバート・デュヴァルといった面々が並んでいながら、どれも大根にしか見えないのは監督の不甲斐なさゆえであろう。坂本龍一の音楽にしても今回だけは全く印象に残らない。