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Channel: 元・副会長のCinema Days
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Technicsのシステムを試聴した(その1)。

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 Panasonicが展開するオーディオブランド、Technicsのシステムの試聴会に行ってきたのでリポートしたい。このブランドは松下電器時代の1965年に発足し、数々の実績を上げてきた。ところが折からのオーディオ不況により90年代には商品開発を終え、2010年には一度完全消滅している。復活はまず有り得ないと思っていたが、2014年に突如新製品の投入を宣言。顧客層の見直しによるPanasonic自体の業績回復も無関係ではなかったはずだが、このニュースには驚いたものだ。

 第一弾としてリリースされたのは、リファレンスシステムと名付けられたハイエンドのシリーズと、プレミアムシステムと銘打ったミドルクラスの二つである。もちろん各構成コンポーネントは単体商品として個別に購入もできるが、今回はシステムとしてのパフォーマンスを披露するためのイベントである。



 まず聴いたのはリファレンスシステムの方で、コントロールアンプとネットワークプレーヤーを兼ねるSU-R1とパワーアンプのSE-R1、そしてスピーカーのSB-R1から成る、定価ベースで約500万円のシステムだ。外観はかなり立派で、他社の高額製品に引けを取らない。ならば肝心の音はどうだったのかというと・・・・残念ながら、あまり芳しいものではなかった。

 とにかく、不必要に前に出る中高音が硬すぎる。ハイレゾ音源を使ってあらゆるジャンルを鳴らしていたが、どれも印象は一緒。キンキンカンカンと賑やかで、短時間の試聴にもかかわらず疲れてしまった。大昔の“やたらハイファイ度を強調した音”にも通じるところがある。かと思えば低音は制動が効いてスムーズながら、中高域との連携がほとんど取れていない。

 これはおそらく、スピーカーのキャラクターによるものだ。筐体内部で実質的に低音用と中高音用に仕切られているためか、全体としてチグハグで要領を得ないサウンドであり、しかもユニット数の多さも相まって定位が悪い。なおかつ指向性がシビアで、リスニングポジションが限定される。SB-R1はペアで270万円もするが、同価格帯で優秀な海外ブランド品がいろいろと出回っている現状においては、この機種の居場所は無いと思う。

 次に、プレミアムシステムのデモが行われた。CDプレーヤーSL-C700、ネットワークオーディオプレーヤーのST-C700、プリメインアンプのSU-C700、そしてスピーカーのSB-C700によって構成される総額50万円台のシステムだ。



 前述のリファレンスシステムの10分の1の価格帯であるため、当然のことながらスケール感や解像度等には差が出る。しかし、聴きやすさではプレミアムシステムの方が上だ。決め手はやはりスピーカーである。SB-C700のユニットは同軸型の一発だけで、そのせいか定位がとても良い。低域と高域のバランスは悪くないし、指向性も緩いので部屋のどこにいても違和感の無いサウンドが得られるだろう。

 しかしながら、このシステムにおいても出張った中高域の硬さには閉口する。Panasonicのスピーカーの開発陣には“消費者に高音質なスピーカーだと思わせるには、中高音をハデに響かせることが不可欠だ”という認識があるのではないか。もちろん、このような展開のスピーカーを好む者も存在するだろう(確かに店頭効果は期待できると思う)。ただ、他社にバランスの良いモデルが揃っている現在、この製品の音が気に入って買い求めるリスナーはそう多くはないと予想する。

 ちなみに、SB-C700は私が使っているKEFのLS50と似たような価格帯で、同軸ユニットを搭載してる点も共通している。たまたま同じ店内にLS50も展示されており、比較する意味で試聴会が終わった後に少し聴いてみた。繋げていたアンプこそ違うものの、やっぱり(普段聴き慣れていることもあるが)LS50の方が均整のとれた親しみやすい音が出る(笑)。

 いろいろと批判的なことを述べてきたが、ならばTechnicsの復活劇自体を評価しないのかというと、決してそうではない。かなり興味深い提案もおこなわれている。それに関しては次のアーティクルで述べたい。

(この項つづく)

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