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Channel: 元・副会長のCinema Days
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「プリンス・オブ・シティ」

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 (原題:Prince of the City)81年作品。この頃のシドニー・ルメット監督作としては地味で、娯楽性も高いとは言えない内容なのだが、しっかりと作り上げられており、観る価値はある。社会派作品が好きな映画ファンならば、満足する出来だろう。

 ニューヨーク市警の麻薬調査班に籍を置くダニーは、裁量権の大きいこの部署の仕事が気に入っていた。仲間たちとも良い関係を築き、事件関係者から若干の“袖の下”をいただきつつも、市警本部とも距離を置いた“町のプリンス”とも呼ばれるこの遊撃隊において実績も上げている。ある日、かねてより市警内部の腐敗堕落ぶりを忌々しく思っていた地方検事局は、ダニーに協力を要請する。警察内の汚職を地検に通報することにより、それまでの彼の所行は不問にするというのだ。



 地検からのオファーを渋々引き受けたダニーは、無線マイクを身体に隠して問題警官に次々と接触。証拠を集めていくが、当初の“協力はするが、仲間は売らない”という彼の言明とは裏腹に、結果的に麻薬調査班の同僚たちをも窮地に追いやっていく。ついには追いつめられた汚職警官が自殺したり、彼の親戚筋にも不幸が忍び寄ってくる。それでも地検の捜査は拡大する一方で、連邦検察官まで乗り込んでくるに至り、事態はダニーの手に余るようになる。

 主人公を取り巻く環境の厳しさの描写には、まるで容赦ない。仲間を失い、周囲からの信用も得られないようになる。ただし、これが現実だという本作の主題には納得出来る。アメリカの警察はその組織的構造上、不正が起こりやすい。ダニーのようなディレンマを抱えている警官も大勢いるのだろう。そして、突き放したようなラストシーンは、この問題の深刻さをより一層印象付けられる。

 ルメットの演出は実に手堅く、長い上映時間を飽きさせずに引っ張っている。主演のトリート・ウィリアムズをはじめ、そんなにメジャーではない俳優ばかり集めているのもドキュメンタリー・タッチの作風に合致している。アンジェイ・バートコウィアクのカメラによる、冷たい手ざわりのニューヨークの街の風景、ポール・チハラによる音楽も効果的だ。

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