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Channel: 元・副会長のCinema Days
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「ビッグ・アイズ」

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 (原題:BIG EYES)出来そのものよりも、題材の方が面白い映画だ。また「エド・ウッド」(94年)以来、久しぶりにティム・バートン監督が実在の人物を取り上げたことでも注目されよう。

 1950年代、主人公マーガレットは夫とうまくいかず、娘を連れて家を飛び出す。しかしシングルマザーが職にありつくのは難しかった時代で、得意の絵を描くことで何とか糊口を凌いでいた。ある日、彼女が描く“大きな瞳の子供”の絵に惚れ込んだ自称画家のウォルター・キーンという男と出会い、結婚する。彼はちっとも売れない自分の絵の代わりに、マーガレットの作品を行きつけのライブハウスに展示したところ、思わぬ評判を呼ぶ。

 しかしあろうことか、ウォルターはそれらの絵を“自分の作品”だと偽り、巧みな話術や宣伝力によってブレークさせる。たちまち町の名士としてのし上がったウォルターに対し、マーガレットは一日中アトリエに“軟禁”され、絵を描き続けるハメに。耐えられなくなった彼女は、ついに真実を公表することを決意する。

 まるで近年話題になった“ゴーストライター事件”を彷彿とさせるような筋書きだが、これが事実だというのだから興味深い。しかも、美術品の評価基準が曖昧だったり、ウォルターの臭い御涙頂戴話がマスコミに大々的に取り上げられたりといった、軽佻浮薄な世相は今も昔も変わらないことを示しているのも痛快だ。マーガレットの主張は裁判沙汰にまで発展するが、法廷での彼女とウォルターとの“決闘”の場面はまさにケッ作。

 だが、欠点が目立つ映画でもある。何より、ヒロインがどうしてこういうタイプの絵を描くようになったのか、まるで示されていないのだ。そのあたりを描き込まないと作品に深みが出ないのだが、マーガレットの作品に最初から心酔しているバートン監督はそこまで気が回らなかったようだ。

 そして、彼女が反撃に転じる切っ掛けになったのが某宗教の影響だったというのも安直に過ぎる。実際は紆余曲折があったはずだが、表面をなぞるだけでは説得力がない。今回の主人公は「エド・ウッド」とは違って“同業者”ではなかったことも影響しているのだろう。

 繊細で控えめな妻を演じるエイミー・アダムスはいつも通りの熱演。しかし、ヒロイン像がよく練られていない作劇ではリアリティに乏しい。対してウォルター役のクリストフ・ヴァルツは、観る者を圧倒させる怪演だ。口八丁手八丁で嘘を重ね、窮地に立っているのに根拠のないプライドを全面展開させているという屈折したキャラクターを、賑々しく表現している。

 コリーン・アトウッドの衣装デザインや、ダニー・エルフマンの音楽も光る。それにしても、現代美術のポスターやカードを有料で配るという商法を考え付いたのはウォルターが最初だったという点は面白い。金儲けのネタは、アイデア次第でどこにでも見つけられるのだ。

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