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「エネミー・オブ・アメリカ」


 (原題:Enemy Of The State)98年作品。別に何てこともないハリウッド製大味サスペンスなのだが(何しろプロデューサーがジェリー・ブラッカイマーだ ^^;)、今から考えると多少の興味を覚える。先を見越した製作側の目の付け所は、決して悪くなかったということだろう。

 首都ワシントンに住む弁護士のディーンは順風満帆な生活を送っていたはずだったが、ある日、偶然出会った大学時代の同級生から出所不明のビデオテープを押し付けられたことにより、彼の人生は急展開する。テープの中身は、国家安全保障局(NSA)の高官レイノルズがテロ防止法案をめぐって対立する議員を暗殺している場面だった。こうして何も知らないままNSAのターゲットになったディーンは、NSAの情報管理システムによってプライバシーを暴かれ、職まで失ってしまう。彼は過去に軋轢のあった元NSA技官で現在は情報屋のブリルに助けを求め、共にNSAと戦う決意をする。

 トニー・スコット監督らしいチラチラとした外連味たっぷりのカメラワークは鬱陶しく、展開も行き当たりばったり。上映時間は不必要に長い。さらにクライマックスの銃撃戦の段取りが、同監督の旧作「トゥルー・ロマンス」の二次使用だったのには脱力した。

 しかし、物語の設定に限ればけっこう面白い。地球上のどこにいようと、巨大システムから監視されているという気色悪さ。たとえば特定秘密保護法なんかが極端に拡大解釈されると、ひょっとしてこんな社会になってしまうのではないかという、苦々しい思いがこみ上げる。主人公たちが、悪者と同じ方法で仕返しするのも象徴的だ。

 主演のウィル・スミスは可もなく不可もなしだが、ブリルに扮するジーン・ハックマンは儲け役だ(昔、コッポラ監督の「カンバセーション/盗聴」で彼が演じた役柄に通じているあたりも面白い)。ジョン・ヴォイトも悪役を演じさせると凄味が出てくる。トレヴァー・ラビンの音楽も好調だ。

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