(原題:Sorcerer)77年作品。1953年にフランスで作られたサスペンス映画の傑作をハリウッドでリメイクしたものだ。アメリカ映画がヨソの国の作品を再映画化した例は枚挙に暇が無いが、大半がオリジナル版に及ばない出来映えである。本作も同様で、しかも元ネタが良く知られているだけに、その“落差”は相当なものだ。
ジャングルに囲まれた南米の小さな街ポルベニールは、犯罪者や食い詰めてヨソから流れ着いた連中で溢れていた。ある日、そこから300キロほど離れた油田で爆発事故が起き、大火災が発生する。石油会社の支配人は鎮火させるには爆風で炎を吹き消すしかないと判断するが、一番近いポルベニールには少しの衝撃で爆発する生のニトログリセリンしかない。
そこで石油会社は多額の報酬を条件に、ニトロ運搬の希望者を募集。脛に傷のある4人の男が志願し、ニトロを積んだ2台のトラックで現場へと向かう。しかし、行く手には数々の難関が立ちはだかっていた。
設定もストーリー展開もオリジナルとほぼ一緒ながら、緊張感や重量感は天と地ほどの違いがある。53年版がモノクロであった点を勘案しても、この映画の手応えの無さには脱力してしまう。とにかく、見せ方が平板だ。盛り上がるはずの箇所は段取りが悪く、カメラも腰高で、画面には奥行きも無く、大したインパクトも付与出来ないまま流れていくだけ。ラストだけはオリジナルと違うが、それによって何か得るものがあったのかというと、まるでなし。
主人公にはロイ・シャイダーが扮しているが、精彩に欠ける。他の3人に至ってはコメントする気にもならない。監督はこの頃ヒット作「エクソシスト」を手掛けた後で好調だったと思われていたウィリアム・フリードキンだが、おそらく彼のフィルモグラフィの中では最低の出来だろう。タンジェリン・ドリームやキース・ジャレット等のナンバーを集めた音楽も、あまり効果を上げていない。