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「団地妻 ニュータウン禁漁区」

 84年製作のにっかつロマンポルノの一作。監督は映画でもっとも登板回数が多く、その後はテレビドラマの演出を数多く手掛けていた西村昭五郎。秀作も多かったが駄作もたくさんあった彼の代表作のひとつである。

 夫の家族との同居生活から解放されて、団地に移ってきた和子(仁科まり子)は夫との甘く自由な生活を期待していた。しかし、そこに待っていたのは下の階に住む3人の主婦たちの罠であった。

 引っ越してきたばかりの和子の前に3人は突然現れる。アメリカ映画「イーストウィックの魔女たち」に出てきた魔女トリオみたいに。最初はゴミを出す日とか自治会のきまりとか、親切そうに教えてくれるのだが、次にあらわれるのが、和子が夫を送りだして家の中を掃除しているときだ。3人はいつのまにか台所のテーブルについている。どうやって上がったのかと問う間もなく、和子は誘われて彼女たちの一人の家でいかがわしいシロクロショーを見るハメになる。

 この棟じゃ遅い方だ、他の団地ではとっくにやってるレクリエーションだという彼女たちの会話。水割りを飲みながらの鑑賞会である。シロクロショーで生計を立てている貧しい男女と昼間からこういうヒマつぶしをしている主婦たちのグロテスクさが対比されるショッキングな場面だ。主婦が本番ショーを見ることが問題なのではなく、テレビと同じ感覚でおしゃべりしたり物を食べながら見ていることが不気味なのだ。

 次に和子は3人のうちの一人がスーパーで働いている若者とからみのシーンをやってる場面を見せられる。本人も見られるのを承知しているという。が、今回は見る方の態度はいっそう不真面目だ。世間話ばかりしてベッドの方は見向きもしない。しかしそれでも依然としてベッドの上ではいやらしい場面が展開している。この二つを同時にとらえたこの構図の恐ろしさをいったい何と表現したらいいのだろう。社会が内部から腐っていく様子を絵にすると、たぶんこういう映像になるに違いない。

 さらに、彼女たちは和子の浮気を夫に密告する。和子は3人の餌食だったのだ。それから復讐がはじまり、3人の主婦たちは次々と和子の犠牲となっていく。そしてまた新しく一組の若い夫婦が隣に入居してくる。夫に離縁された和子は暗い情熱のはけ口をこの夫婦に向けるところで映画は終わる。

 現代社会のひずみをどこにでもある団地を舞台にして描き出した問題作。内容の過激さから封切り当時は成人映画にはめずらしく新聞に評論が載ったほどだ。
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