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Channel: 元・副会長のCinema Days
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「タンデム」

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 (原題:TANDEM)87年フランス作品。落ちこぼれ男二人の物悲しいロードムービー、しかも彼らは若くはなく、それどころか片方は身体にガタが来ている。ならばショボくれて気の滅入るような作品かと思うとさにあらず、含蓄のあるペーソスあふれた展開でしみじみとした感慨を呼ぶ。パトリス・ルコント監督の初期作品だが、この頃からその才気には端倪すべからざるものがあった。

 ラジオの聴取者参加型クイズ番組のベテラン司会者ミシェルは、もう20年以上もこの仕事を続けており、マネージャーのベルナールと共に全国を回る日々を送っている。ある町での公開録音のショーの最中に、局の上層部からベルナールに収録中のものを最後に番組を打ち切るとの知らせが届く。ところがベルナールはミシェルに本当のことを言い出せない。それからはベルナールはニセモノの公開録音をセッティングし、オンエアされることのない“番組”作りに専念するハメになるが、やがて隠し切れずにミシェルに知れてしまう。



 面白いと思ったのは、彼らは女性に対して極度に臆病だということだ。かといってゲイでもない。ただナイーヴすぎるだけである。ミシェルは(たぶん)結婚はしておらず、ベルナールにしても妻との仲は“あって無いようなもの”だという。二人が旅先で出会う女達は多分に積極的。しかし彼らはそそくさと逃げてしまうのだ。

 劇中でミシェルが“女性が内気にさせるんだよ”とつぶやくように、二人の“女性観”と実際のそれとは大きな落差がある。だが、決してそれは軽く笑い飛ばせるようなものではない。男ならば誰しも女性の言動に対して納得出来ないもの(あえて言えば、理解不能な部分)を感じることが多々あるはずだ。その心情を切々と訴えるようなこの映画の作劇は、観る者の共感を呼ぶ。男の心根というものは、本作が示すように男同士じゃないと分かり合えないのかもしれない。

 ほんの少しであるが、希望を感じさせるラストは秀逸だ。ミシェル役のジャン・ロシュフォールとベルナールに扮するジェラール・ジュニョーは好演。ドニ・ルノワールのカメラによる奥深い画面造型も見応えがある。

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