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Channel: 元・副会長のCinema Days
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「ジャージー・ボーイズ」

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 (原題:Jersey Boys )クリント・イーストウッド監督らしく、対象を突き放して描こうとして実は何も描けていないという、悪いクセがここでも出ている。しかしながら音楽シーンはそこそこ良く撮れているので、その分は酷評するほどのことでもない。全体的な出来としては“中の中”ぐらいの、当たり障りのない一本だろう。

 1950年代、ニュージャージー州のベルヴィルはイタリア系移民が数多く住む小さな町だった。しがないチンピラ暮らしをしているバンドマンのトミー・デヴィートは、美しいファルセット・ヴォイスの持ち主フランキーを自分のグループに加入させる。その歌声は、地元マフィアのボス、ジップ・デカルロも魅了するほどだった。やがて天才的ソングライターのボブ・ゴーディオが参加し、ベースのニックを加えた4人組“フォー・シーズンズ”は、62年の「シェリー」の大ヒットを皮切りに快進撃を開始する。しかし、トミーの身勝手な行動により、4人の結束は次第に揺らいでいく。

 ブロードウェイで好評の同名のミュージカルの映画化だが、日本では上演されていないため本作がどの程度元ネタを踏襲しているのかは不明だ。しかし、ミュージカル劇をベースにしている割には随分と“薄味”な作りであるのは気になる。たぶん舞台では往年のヒット曲が流れてそのたびに熱く盛り上がるのだろうが、映画では平板だ。

 とはいっても、先日観た「舞妓はレディ」のようなママゴトめいた出し物とは大違いの、質の高いパフォーマンス場面が展開されていることは確かである。それなりに楽しめる出来であり、特にフォー・シーズンズを知らない若年層には大きくアピールすることだろう。しかし、その音楽の力は演奏場面だけに限定されていて、映画全体を覆うような高揚感に結び付くことは無い。さらに、各登場人物が観客に向かってナレーションを敢行するに至っては、作劇自体の“事務的な冷淡さ”みたいなものが強調されてしまう。

 そもそも、地元の刑務所を出たり入ったりしていたトミーがはたらいていた悪事と、その片棒を担がされたフランキー達との関係をメリハリも無くサッと流してしまうのは、結束が固いはずの“ジャージー・ボーイズ”のアイデンティティーをもどこかに置いてきたような扱いではないか。

 呆れたのは、67年に発表されたフランキーの代表作「君の瞳に恋してる」が出来た背景には彼の娘の死が関係しているという描き方が成されていること。実際に彼の娘が麻薬中毒でこの世を去ったのは、それよりずっと後の80年なのである。事実を意図的に曲げているのは、気分の良いものではない。

 ジョン・ロイド・ヤングをはじめとするキャストに特筆すべきものは無い。強いて挙げればデカルロに扮したクリストファー・ウォーケンの存在感ぐらいだ。プレスリーが一線を退いてからビートルズ等が台頭してくる60年代半ばまでの音楽シーンを振り返るという意味では観る価値はあったが、映画としては大して評価は出来ない。

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