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Channel: 元・副会長のCinema Days
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「TOKYO TRIBE」

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 悪ふざけが過ぎる。もっとも園子温監督の前作「地獄でなぜ悪い」(2013年)も相当に狂騒的な映画だったが、カツドウ屋としての矜持を登場人物に投影して説得力を感じさせたものだ。しかし本作にはポリシーも主体性も不在で、あるのは笑えない宴会芸の羅列のみ。評価出来る余地は無い。

 近未来の東京では暴力的な若造どもが各地でトライブ(族)を形成し、互いに鎬を削ると共にかろうじて均衡を保っていた。そんな中“ブクロWU−RONZ”のトップであるメラは、ライバル視する“ムサシノSARU”の海(カイ)を何とか潰そうと、広域暴力団のブッバ家や政治家達を巻き込んで戦争を始める。一方、“ブクロWU−RONZ”に拉致された若い女スンミは、実は香港マフィアの有力者の身内で、ヤクザな家柄に嫌気がさして東京まで逃げてきたのだ。メラが引き起こしたバトルはスンミの争奪戦と合体して、際限なく広がっていくのだった。

 ストーリーや設定は幼稚で、かつ展開も無茶苦茶。アクション場面はグダグダで、舞台セットは限りなく安っぽい。時折挿入されるギャグも、寒々しい限りだ。

 ならば面白いキャラクターが大挙して出ているのかというと、これがまったくダメ。スクリーン上に跳梁跋扈している連中は、見かけはハデだがどいつもこいつも中身がカラッポである。とにかく、観客が感情移入出来る奴が一人もいない。こんな調子で2時間も保たせられるわけがないだろう。

 その代わりと言っちゃ何だが、目先の新奇さを出すためか、本作には“ラップ版ミュージカル”とでも呼ばれるような仕掛けが用意してある。狂言回し役のMC SHOWがラップに乗せてナレーションをすれば、各登場人物も脈絡が無いまま突然歌い出す。しかも、歌の内容も字幕で表示されるという念の入りよう。

 これで“ヒップでクールなノリ(?)”を実現したと言わんばかりの作者のスタンスだが、あいにくこちらはラップだのヒップホップだのといったシロモノは嫌いなのだ。しかも、これを日本語でやられると虫酸が走る。映画作家たるもの、たとえ観客にとって苦手なジャンルの音楽を多用しても、少なくとも上映している間だけはその音楽が好きになってしまうような力業が必要だが、この映画にはそんな部分はまったくない。延々と低級なサウンドが垂れ流されるのみ。

 メラ役の鈴木亮平をはじめ、佐藤隆太、染谷将太、でんでん、窪塚洋介、竹内力、さらには叶美香や中川翔子も顔を揃えるという、奇を衒ったキャスティングながらキャラの掘り下げはまったく見られない。さらにはYOUNG DAISだのMC漢だのといった本職のラッパーの連中も鬱陶しい限り。印象に残ったのはパンツ丸出しで頑張るスンミ役の新鋭・清野菜名ぐらいだ(爆)。

 とにかく、作っている奴らは酒が入っていたか、あるいはヘンなクスリをやっていたかのいずれかとしか思えない出来である。劇場でカネ取ってやるもんじゃなく、仲間内の上映会でチマチマと楽しむべきシャシンだ。観る価値無し。

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