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Channel: 元・副会長のCinema Days
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「プロミスト・ランド」

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 (原題:PROMISED LAND )かなり“薄味”の映画である。作劇や演技、メッセージ性など、いずれもボンヤリとした感じで印象に残らない。しかも取り上げた題材の一番重要な点には言及されておらず、これでは失敗作と言われても仕方が無いだろう。ガス・ヴァン・サント監督作としても、出来栄えは下から数えた方が早い。

 エネルギー開発会社に勤めるスティーヴは、同僚の女子社員のスーと共にペンシルバニア州の田舎町マッキンリーにやってくる。絵に描いたような過疎地ながら、この地下には良質のシェールガスが埋蔵されているのだった。スティーヴたちの目的は、地主たちから採掘権を買い叩くことである。

 街の顔役に渡りをつけ、農場主たちを次々と説得する等、出だしは快調であった。ところが、環境活動家を名乗るダスティンなる男の出現によって雲行きが怪しくなる。彼の巧妙な妨害工作によってスティーヴたちの仕事は支障をきたすようになるが、実はこのダスティンというのがとんだ食わせ者だったのだ。



 シェールガスの採掘が環境に悪影響を与えるのか、あるいはそんなに影響はないのか、映画は示さない。シェールガスは次世代エネルギーの寵児に成り得るのかどうか、それも説明されていない。地元民たちの暮らし向きは実のところどうなのか、採掘権売却に関する彼らの趨勢はどうなのか、それらについても詳しく言及されていない。要するに、この映画は“状況”について何も描いていないのだ。

 ならばスティーヴの生い立ちと、この件に関わることによって心境が変わってくるあたりを丹念に追っていたのかというと、それも違う。確かに彼は貧しい農家の出で、零細な農業経営の辛さも知っている。どうやったらマッキンリーの農民たちを懐柔すればいいのかも分かっている。

 しかしながら、どうして彼がエネルギー会社に勤務して阿漕な稼業に身をやつすようになったのか、なぜ今回そのスタンスが揺らぐようになったのか、そのあたりの描写が不十分だ。せいぜいが、ちょっと気になる地元の女と仲良くなったからという、下世話なモチーフが提示されるのみ。これでは説得力が無いだろう。

 主演のマット・デイモンは脚本に参加するなど、並々ならぬ意欲は感じさせるが、映画を観る限りでは空回りしている。他のキャストも総じて印象が希薄だ。わずかにスー役のフランシス・マクドーマンドが気を吐いている程度。ハッキリ言って、彼女を主役に据えた方が思い切ったストーリー展開が出来たかもしれない。

 余談だが、最近銀行に足を運ぶと、シェールガス開発関連の信託投資をよく奨められる。いわく“アメリカは国策でやってるので、絶対損はしません”とのことだが、こんなのは政権が変わればどう転ぶか分からない。今のところ、様子見である(笑)。

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