(原題:Sunshine on Leith )物足りない出来だ。何よりストーリーが面白くない。もちろんミュージカル映画だから筋書きが緻密なものである必要はないのだが、地に足が付かないような実体感の無いドラマ運びには閉口するしかない。
スコットランドの田舎町リースに、アフガニスタンでの兵役を終たデイヴィーとアリーが帰還する。デイヴィーの両親ロブとジーンは今年で結婚25周年だ。一家はお祝いムードに包まれるが、そのパーティ会場でデイヴィーの妹リズにプロポーズしたアリーはあえなくフラれ、しかもロブには隠し子がいることが発覚。楽しいはずの集まりは、思いがけなく暗転してしまう。
確かにアフガニスタンまで遠征したスコットランド人兵士はいるだろうが、ここではどうも場違いのような印象を受ける。冒頭の戦地のシーンなんか、低予算のためかショボい画面しか提示出来ず、早々に気勢を削がれる感じだ。時代を第二次大戦直後あたりに設定した方が違和感は少なかったかもしれない。
リズが求婚を断った理由が身勝手とも受け取られそうなものだったり、24歳にもなるロブの隠し子が都合良く出てきて、それに対するジーンの対応がワザとらしかったりと、どうにも各モチーフが練られていない。ハッキリ言って、どれも“思い付き”の次元を出ていないのだ。
元ネタは英国で大ヒットしたミュージカル劇らしいが、舞台での方法論がそのまま映画でも通用すると思ったら大間違いだ。観る者と演技者との距離が一定のまま推移する演劇とは違い、カメラを動かさなければいけない映画では、それに見合ったメソッドが必要であるはずだが、ここでは何も工夫されていない。
デクスター・フレッチャーの演出は平板そのもので、特に肝心のミュージカル場面のヴォルテージの低さは如何ともし難い。往年のMGMミュージカルやインド製娯楽映画のレベルは期待しないが、もうちょっとメリハリを付けた撮り方をして欲しいものだ。音楽はスコットランドの国民的バンドと言われるプロクレイマーズのナンバーが使われているが、このグループには個人的にほとんど馴染みが無く、わずかにラストに流れる「アイム・ゴナ・ビー(500マイルズ)」を知っている程度。楽曲も特段優れているとは思えない。
ピーター・ミュランやジェーン・ホロックス、ジョージ・マッケイらの演技は可も無く不可も無し。各人が披露する歌声も、特筆すべきものは無い。結局、一番印象に残ったのは撮影場所のエディンバラやグラスゴーの街並みだ。歴史を感じさせ、実に趣がある。観光気分を味わいたいならば、もってこいのシャシンであろう。