2014年7月9日、高級オーディオメーカーとして知られた山水電気が破産手続きを開始し、完全消滅した形になった。とはいえ同社は90年代には業界の第一線から退いており、ブランド名が残っていただけで、このニュースを聞いても今さら何の感慨も無い。
ただ、あらためて思うのは、企業の命運というのは各従業員が握っているものではなく、トップの資質次第だということだ。
同社は1944年に創業。当初は電源トランスの生産・販売を手掛けていたが、60年代末にリリースした海外向けオーディオ用レシーバー(アンプとチューナーが一体化したもの)が評判になり、それから事業の中心をオーディオ機器(特にプリメインアンプ)に移した。70年代から80年半ばまでが全盛期で、トリオ(現JVCケンウッド)やパイオニアと並んで“オーディオ御三家”と呼ばれ、一世を風靡したものだ。
ところが商品ラインナップをアンプに固定化したせいで、デジタル化の波に乗り遅れる。さらには目先の資金繰りのために海外ファンドの傘下に入るが、それらのファンドが次々に破綻。いよいよ経営が行き詰まっていく。世の中がバブルに踊ってどこの企業も好業績だった89年にはすでに赤字だったというのだから、呆れたものである。
とうとう90年代末には“本業”を見捨てるハメになってしまうのだが、この会社の経営陣は最後まで前向きなマーケティングを打ち出すことは無かった。
いくら特定分野で実績を出そうとも、常に世の中のトレンドを読み、それに合わせた提案を絶えずしていくことこそ企業の生き残る道だ。山水電気はそれが出来なかった。もちろん、特定のコアなユーザー向けに手の込んだ商品を少量作り続けるやり方もあっただろう。しかし、東証一部に上場を果たしたような企業に、そういうガレージメーカーみたいな小回りの利く方法論を採用することは出来ない。この会社が破綻したのは、まあ当然だ。
一番馬鹿げていると思ったのは、山水電気は87年に金を掛けてCI(コーポレートアイデンティティ)を実施し、ロゴを変更したことだ。CIというのは、アサヒビール等に代表されるように、新しい商品やサービス、または新しい企業理念や体制を打ち出す時に併用されるものである。ところが山水電気は単にロゴマークを変更しただけ。しかも、商品デザインやラインナップはほとんど変わらない。さらに言えば、その新しいメーカーロゴは全然垢抜けてはいなかった(前の方が良かった)。一体何のためのCIだったのか。
おそらく当時の経営陣は“CIというものが流行っているから、自分のところでもやってみよう”という安易な気持ちで実施したのだろう。その資金や労力を新しいコンセプトの商品開発に振り向けていれば、少しは違っていたのかもしれない。
さて、私はこのメーカーのアンプを使ったことは一度も無い。もちろん、歴代の製品は何度も試聴している。しかし、どれも好みに合わなかった。たぶんこの重々しい音が好きな人はけっこういたのだろう。ただし個人的には、安いクラスはONKYOに、上級機器はACCUPHASEやLUXMANの製品に、完全に負けていると思ったものだ。
余談だが、私はなぜかSANSUIのチューナーは保有していたりする(笑)。別にこのメーカーの製品が好きであったということではなく、たまたまチューナーの更改時期において手頃なモデルがこれしか店頭に無かったので買い求めただけの話。何度か故障して修理に出したが、今でもちゃんと動いてくれる。フルサイズのチューナーが市場にあまり存在しないことを考え合わせると、たぶん“寿命”になるまで使い続けると思う(^^;)。
ただ、あらためて思うのは、企業の命運というのは各従業員が握っているものではなく、トップの資質次第だということだ。
同社は1944年に創業。当初は電源トランスの生産・販売を手掛けていたが、60年代末にリリースした海外向けオーディオ用レシーバー(アンプとチューナーが一体化したもの)が評判になり、それから事業の中心をオーディオ機器(特にプリメインアンプ)に移した。70年代から80年半ばまでが全盛期で、トリオ(現JVCケンウッド)やパイオニアと並んで“オーディオ御三家”と呼ばれ、一世を風靡したものだ。
ところが商品ラインナップをアンプに固定化したせいで、デジタル化の波に乗り遅れる。さらには目先の資金繰りのために海外ファンドの傘下に入るが、それらのファンドが次々に破綻。いよいよ経営が行き詰まっていく。世の中がバブルに踊ってどこの企業も好業績だった89年にはすでに赤字だったというのだから、呆れたものである。
とうとう90年代末には“本業”を見捨てるハメになってしまうのだが、この会社の経営陣は最後まで前向きなマーケティングを打ち出すことは無かった。
いくら特定分野で実績を出そうとも、常に世の中のトレンドを読み、それに合わせた提案を絶えずしていくことこそ企業の生き残る道だ。山水電気はそれが出来なかった。もちろん、特定のコアなユーザー向けに手の込んだ商品を少量作り続けるやり方もあっただろう。しかし、東証一部に上場を果たしたような企業に、そういうガレージメーカーみたいな小回りの利く方法論を採用することは出来ない。この会社が破綻したのは、まあ当然だ。
一番馬鹿げていると思ったのは、山水電気は87年に金を掛けてCI(コーポレートアイデンティティ)を実施し、ロゴを変更したことだ。CIというのは、アサヒビール等に代表されるように、新しい商品やサービス、または新しい企業理念や体制を打ち出す時に併用されるものである。ところが山水電気は単にロゴマークを変更しただけ。しかも、商品デザインやラインナップはほとんど変わらない。さらに言えば、その新しいメーカーロゴは全然垢抜けてはいなかった(前の方が良かった)。一体何のためのCIだったのか。
おそらく当時の経営陣は“CIというものが流行っているから、自分のところでもやってみよう”という安易な気持ちで実施したのだろう。その資金や労力を新しいコンセプトの商品開発に振り向けていれば、少しは違っていたのかもしれない。
さて、私はこのメーカーのアンプを使ったことは一度も無い。もちろん、歴代の製品は何度も試聴している。しかし、どれも好みに合わなかった。たぶんこの重々しい音が好きな人はけっこういたのだろう。ただし個人的には、安いクラスはONKYOに、上級機器はACCUPHASEやLUXMANの製品に、完全に負けていると思ったものだ。
余談だが、私はなぜかSANSUIのチューナーは保有していたりする(笑)。別にこのメーカーの製品が好きであったということではなく、たまたまチューナーの更改時期において手頃なモデルがこれしか店頭に無かったので買い求めただけの話。何度か故障して修理に出したが、今でもちゃんと動いてくれる。フルサイズのチューナーが市場にあまり存在しないことを考え合わせると、たぶん“寿命”になるまで使い続けると思う(^^;)。