(原題:La Guerre du feu)81年製作のフランス=カナダ合作映画。舞台は旧石器時代。ある種族が先祖代々引き継いできた火が消えてしまう。彼らは火を作り出す手段を持っていなかった。村の青年たちは失われた火を探すべく、長く苦しい旅に出る。
1時間40分もの上映時間の中では、台詞がほとんど無い。登場人物達は行動と表情だけでドラマを演出する。その意味では“リアリズムに徹した作品”とも言える。主人公達は火を自在に起こすことが出来る種族と遭遇し、文化的に触発を受ける。
さらに下世話なことを言えば、獣同然に“バック”からの生殖行為しか知らなかった彼らが、女性と正常位により対等な立場で付き合うことを学ぶ話でもある。文化人類的な背景と、いくぶんフェミニズムの要素も入っているところが興味深い。また、ロードムービーとしても退屈しない程度のエンタテインメント性を確保している。
監督はこの後「薔薇の名前」や「子熊物語」で広く知られるようになるジャン=ジャック・アノーだが、対象から一歩も二歩も“引いた”ようなタッチでクールに仕上げる作風はこの頃から見受けられる。レイ・ドーン・チョンやロン・パールマンらのキャストは熱演。フィリップ・サルドの音楽も良い。また巧妙なメイクは、その年のアカデミーメイクアップ賞も獲得している。
なお、日本公開時には冒頭に説明的なアニメーションが挿入され、ラストにはニュートン・ファミリーによるエンディング・タイトル曲も付けられていた。この頃にはときどき実行されていた“独特の”マーケティングだが、もちろん褒められたことではない。ただ、本作に限ってはそれほどの瑕疵になっていないことが御愛敬か。確かにニュートン・ファミリーのナンバーは今から考えても良い曲だった。