(原題:Edge of Tomorrow)観ている間は退屈せず、鑑賞後はきれいサッパリ忘れることが出来るという、肩の凝らない娯楽映画の見本みたいなシャシンだ(まあ、本当に忘れてしまったら感想を書けないのだが、それはさておき・・・・ ^^;)。主演のトム・クルーズの“持ち味”も上手く活かされている。
本作の舞台は、宇宙からの侵略者“ギタイ”によって人類絶滅の危機に瀕している近未来だ。主人公ウィリアム・ケイジは米軍の広報担当の将校だったが、ある日突然最前線での勤務を命じられる。生還率がかなり低い“現場”での仕事などまっぴらゴメンとばかりにゴネまくるケイジだが、ついには力尽くで激戦地へと送られてしまう。
着任間もなく、ロクな訓練も受けないままいきなり戦闘地帯に投入され、あえなく戦死してしまう彼だが、どういうわけか気が付くと出撃の前日にタイムリープしているのだった。それから彼は、死ぬたびに着任当日に“戻る”という無限ループに突入する。やがてケイジは似たような境遇にある女性兵士のリタと知り合い、戦闘スキルを上げて敵を倒すための策略を練ろうとする。桜坂洋によるライトノベル(私は未読)のハリウッド映画化版だ。
トム御大扮するケイジの、前半の救いようのないヘタレぶりが愉快だ(笑)。理不尽な派遣命令に対し泣き言を並べ立て、挙句の果てには上官を脅迫しようとし(反対に組み伏せられるのだが ^^;)、戦地では捨て駒のように扱われても文句も言えない。そんな奴がタイムリープによって(亀の歩みのごときスローペースで)少しずつ成長し、何とか兵隊らしくなっていく過程には、苦笑しながらも共感してしまう。
さらに映画が進むと、どこまでケイジが体験した“未来のシミュレーション”なのか分からなくなってくるあたりも納得した。タイムリープの原因は“最初の戦死”の際にエイリアンの返り血を浴びたことによることが明らかになるが、大量の輸血によってその能力が失われていくという設定(ループがそこで途切れ、ストーリーが一段落すること)も悪くない。
ダグ・リーマンの演出は「ボーン・アイデンティティー」等の頃よりも少しはメリハリで出てきたようで、アクション場面をソツなく見せる。エミリー・ブラントやビル・パクストンといった脇のキャストもけっこうイイ味を出している。
よく考えれば“クライマックスで、どうして主人公があのような芸当を見せることが出来るのか”とか“ラストシーンの処理は、タイムトラベルの定石とは相容れないものではないのか”とかいった突っ込みどころもあるのだが、トム御大の奮闘を見ていれば、あまり気にならなくなる(笑)。
それにしても、戦線がアメリカではなくヨーロッパで、現場がノルマンディーというのは何やら意味ありげだ。そして、おそらくは助太刀に入るはずだったロシア軍や中国軍が戦闘が終わった彼の地で略奪などの狼藉をはたらくことは想像に難くない。いっそのこと、エイリアンの拠点を中国の奥地あたりに設定した方が、話が一筋縄ではいかなくなって面白かったとも思う(爆)。