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Channel: 元・副会長のCinema Days
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「ポンペイ」

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 (原題:Pompeii )面白くない。そもそも、ラブロマンスに仕上げようとしたのが大間違い。色恋沙汰をメインに据えれば、どうしてもドラマの幅が狭くなる。史実をネタにするのであれば、歴史好きを唸らせるような重層的な作りにしなければ、撮る意味が無いだろう。一から脚本を書き直せと言いたい。

 紀元79年。主人公マイロはかつてローマ帝国に平定されたケルト民族の生き残りで、今は剣闘士として貴族や民衆の前で殺し合いを演じる日々を送っている。ある日彼は、ポンペイの豪商の娘カッシアと知り合い、互いに好意を抱く。だがローマの元老院に属する政治家のコルヴスは、ポンペイの平和と引換にカッシアを無理矢理に妻に迎えようとする。さらには邪魔になったマイロに無謀な戦いを強要し、競技場で血祭りに上げようと奸計をめぐらす。絶体絶命の事態に追い込まれたマイロだが、その時ヴェスヴィオ火山の噴火が始まった。

 そもそも目の前で大災害が起きているのに、登場人物達は恋愛だの私怨だの利権だのといった些細な事柄に執着していること自体が噴飯物だ。そんなことに拘泥している間に、火砕流や土石流は容赦なく襲ってくる。とっとと逃げる一手だろう。

 同じような題材でやはりラブストーリーを主体にしたマリオ・ボンナルド監督の「ポンペイ最後の日」(60年)は、噴火のシーンを終盤に必要最小限に挿入しただけであったが、そちらの方がまだ納得出来る。

 ポール・W・S・アンダーソンの演出は相変わらず大味で、気勢の上がらない格闘シーンに代表されるように、キレもコクも無い凡庸な展開に終始。主人公達が走り回るラスト近くの活劇にしても、段取りがヘタでアイデアも不足し、まるで盛り上がらない。主演のキット・ハリントンとヒロイン役のエミリー・ブラウニングは可もなく不可もなしの仕事ぶりで特筆するようなものは見当たらない。他の面子も同様。わずかに印象に残ったのは、悪役を憎々しく演じたキーファー・サザーランドぐらいだ。

 もちろん、この映画の売り物である噴火のスペクタクル場面は凄い。技術の進歩には改めて感心する。しかし、それだけでは映画として評価出来ないのも確かだ。余談だが、ポンペイ崩壊を扱うのならばロバート・ハリスの小説「ポンペイの四日間」を映画化して欲しい。

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