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Channel: 元・副会長のCinema Days
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「どっちにするの。」

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 89年作品。金子修介監督のこの頃の代表作で、彼自身によれば“転機になった”映画でもあるという。赤川次郎の小説「女社長に乾杯!」の映画化。当時は東宝の秋興行の目玉として公開された。

 おもちゃ会社パンプキン・カンパニーに勤める平凡なOLの桑田伸子は、コンピューターの動作ミスにより副社長に抜擢されてしまう。しかも社長は後輩の純子で、専務が窓際係長の北林という想定外の人事が現実化。慌てる彼らだが、やがて伸子は何とか傾きかけた会社の業績を立て直そうと経営改革に乗り出していく。

 一方伸子はヤング・エグゼクティブの山本にも御執心なのだが、彼女に思いを寄せる若手社員の丈彦は気をもむばかりだ。そんな中、それまで左前になりつつあった会社経営の裏にはある陰謀が仕組まれていたことが明らかになり、伸子たちは否応なくそれに巻き込まれていく。



 どうしてコンピューターが誤作動したのか、その理由が明かされる冒頭部分から金子監督得意の“おちゃらけモード”が全開で、観る者を一気にマンガチックな世界に引きずり込むことに成功。こうなればしめたもので、話が少々ウソ臭くても笑って済ませられる。

 時代はバブルの全盛期で、いくら会社の業績が傾いても従業員はどこか楽天的。結果として往年の“サラリーマン物”のルーティンをトレースしたような明るさが全編にみなぎっている。この頃は数年後に待ち受けるバブル崩壊と長期不況などは頭の中には無く、その場のノリで日々を楽しむことだけを考えていた連中が幅を利かせていた。今から考えるといかにも能天気で軽く見られそうな風潮だったが、これはこれで良い時代だったのだと思わせる。

 主演は当時のトップアイドルだった中山美穂で、彼女をいかに可愛く撮るか、それが演出の一番のポイントだ。冒頭に書いた“同監督にとって転機になった”というのは、脇目も振らずに対象をとらえて盛り上げるという、良い意味でのプロ意識を会得したということらしい。さらに本作には、この頃売り出し中だった宮沢りえや風間トオルといったトレンディな(?)顔ぶれも揃い、手堅い“客集め”をメインとしたプログラム・ピクチュアの方法論が全面展開している。

 御都合主義のラストにも腹が立たず、中山が歌うエンディング・テーマも心地よく聴けた。それにしても、バブル期から経済的に低迷した昨今に至るまで、うまく時代の波に合わせて乗り切ってしまう金子監督のノンシャランかつしたたかなスタンスには、いつもながら感心する。これからも我々を楽しませてくれるのだろう。

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