(原題:Kick-Ass 2)確かに面白いのだが、前作ほどではない。まあこれは、パート1が“面白すぎた”ので、続編として割を食うのは仕方が無いのだろう。監督がマシュー・ヴォーンから新米(ジェフ・ワドロウ)にチェンジしているのも大きいと思う。
町を裏から牛耳っていたフランク・ダミコ率いる悪者一味が、最弱ヒーロー“キック・アス”と非情なヒロイン“ヒット・ガール”によって全滅させられて数年が経ち、主人公達も平穏な日々を取り戻していた。しかし、正義の血がざわつくのを抑えられない“キック・アス”ことデイヴは、自警団を組織する謎の人物“スターズ・アンド・ストライプス大佐”と出会い、“ジャスティス・フォーエバー”なるヒーロー集団に参加。町に巣くう悪党を懲らしめる活動に勤しむことになる。
一方、フランク・ダミコの息子であり復讐に燃える“レッド・ミスト”ことクリスは“マザー・ファッカー”と名を改め、豊富な資金に物を言わせて世界中から凶悪な殺し屋どもを集結させる。果たしてデイヴは正義を全うできるのか。
前作での重要ポイントになっていた“現実世界と仮面ヒーローとの関係性”は影を潜め、もっぱら主人公達の成長と活躍を追っている。それはそれで良いのだが、どうにも“キック・アス”の造形は物足りない。
前回の彼はヒーローを夢見る冴えない若造であり、オタク趣味が昂じて“空想”から“行動”に移そうするのだが、それが上手くいかずに四苦八苦するところに観客が共感できる余地があった。対して本作での彼はトレーニングを積んだおかげでマッチョであり、腕っ節もある程度強くなっている。しかもけっこう二枚目で、しっかり交際相手がいて、さらには同じヒーロー軍団の女性メンバーともいい仲になる。前作で患った“痛感摩耗症(?)”もいつの間にか治ったようで、これでは感情移入がしにくい。
では“ヒット・ガール”ことミンディはどうかといえば、普通の高校生になれるのかどうか悩んでいる。まあ、考えてみれば前作であれほどの殺戮を重ねてきた彼女が簡単にカタギの生活に馴染むはずもなく、予想通りの展開になるのだが、エゲツない描写を交えてそれなりに見せきっている。でも、それほど印象は深くない。結局“マザー・ファッカー”だけが、アホのまんまで取り残された感じだ(爆)。
気が付いてみれば、前作ほどのテーマ性が無いまま単なる“バトルもの”としてのルーティンに突入していて、作劇のインパクトには欠ける。活劇場面はよく練られていて飽きさせないが、殺し屋集団の中で活躍するのがロシアのオバサンだけで、あとは得意技も出さないままやられてしまうのは不満だ。
アーロン・テイラー=ジョンソンとクロエ・グレース・モレッツの主役コンビは好調。特にモレッツは凄く可愛くなっており、またファンが増えることだろう。ストライプス大佐に扮するジム・キャリーやジョン・レグイザモら脇の面子も良い。パート3も作られる可能性は高そうだ。