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Channel: 元・副会長のCinema Days
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「エージェント:ライアン」

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 (原題:JACK RYAN:SHADOW RECRUIT)つまらない出来。観なくても良い映画だ。トム・クランシー原作の人気キャラクター、ジャック・ライアンの若い頃を描く本作はキレもコクもない展開に終始し、(たぶん作られるであろう)次回作もチェックしようという気には全くならない。

 ウォール街で働くジャック・ライアンは、かつて中東に従軍した際に大ケガをして除隊、今ではCIAの分析官として金融マンを装いながら各国の経済情報の収集を担当している。ある日彼は、上官のハーパーからロシアの投資会社チェレヴィン・グループの不審な動きを監視せよとの業務命令を受ける。モスクワに出向いたライアン待っていたものは、殺し屋の襲撃であった。何とか難を逃れるが、やがて彼は世界中を巻き込む経済テロの陰謀に対峙することになる。

 そもそも彼はエージェントとしてCIAに入ったわけではなく、ただの事務官だ。それがどうしていきなり剣呑な世界に放り込まれるのか、さっぱり分からない。訓練も積んでいないはずの彼はなぜか次々と危機を突破するが、その理由が“海兵隊だったから”という安直なものであるのには失笑してしまう。

 ロシアの連中は徹頭徹尾悪で、アメリカとしてはそれに鉄槌を下すという設定も、いつの時代の話なのかと困惑するばかりだ。鳴り物入りで紹介される“国際的な陰謀”とやらは切迫感が希薄で、アクション場面にはさほど特色もなく、どこかの映画で観たようなモチーフばかり。

 ならばサスペンスは盛り上がるのかというと、これも段取りが上手くなく、シラケてしまう。ジェームズ・ボンド映画にはもちろん、マット・デイモン主演の「ジェイソン・ボーン」シリーズにも大きく水をあけられる体たらくだ。

 だいたいジャック・ライアンは、原作では順調に出世の階段を上っていく頭脳派エリートなのである。それをいくら映画オリジナルの脚本とはいえ、考えるよりも先に(あまりスマートではない)行動に移ってしまうキャラクターの造形は、いかがなものかと思う。

 主演のクリス・パインをはじめ、キーラ・ナイトレイ、ケヴィン・コスナーと多彩なキャストを配しているのに、個性を発揮するような見せ場もない。監督はケネス・ブラナーだが、前作「マイティ・ソー」を観ても分かるとおり、若い頃は輝いていた才能が(今のところ)枯れ果てているような印象だ。チェレヴィン役として出演もしているが、大した演技もしていない。この悪役のバックグラウンドを描き込むと少しは興味を持てる内容になったのかもしれないが、監督自身が演じるキャラクターも練り上げられないようでは話にならないだろう。

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