正直言って、ワケの分からない小説である。しかし“ワケが分からないから、つまらん”と切り捨てる気にもならない。妙な面白さはある。ただその面白さは、普通の娯楽小説のそれとは趣を異にしている。いわば“読み手を選ぶ”書物だと思う。
主人公のビリー・ハロウが案内人を務めるロンドンの自然史博物館の目玉展示物は、巨大なダイオウイカの標本である。ある日、ガイドとして客を引率していたビリーは、ダイオウイカの標本が水槽ごと忽然と消え失せているのを発見する。早速警察当局が捜査に乗り出すが、ビリーに接触してきたのは通常の肩書きの刑事ではなく、“原理主義者およびセクト関連犯罪捜査班”なる怪しげなセクションに属する捜査官達だった。
ロンドンの裏社会に跳梁跋扈する魑魅魍魎どもと関わるハメになってしまった男の冒険談で、作者はヒューゴー賞受賞の実績があるイギリスのファンタジー作家チャイナ・ミエヴィル。当初は標本盗難事件を巡るミステリーかと思わせるが、第1章の終わり付近で突然人間にあらざる異形のモノが登場して、これが幻想怪奇小説であることを認識した。
ただし、登場人物が多すぎる。ビリーを助ける者、敵対する者、あるいは常人の及びも付かない行動規範で勝手にストーリー上に出入りする者、それらが物語が進むにつれて幾何級数的に増えていくのだからやりきれない。しかも、外国文学の文庫版に添付されていることが多い“登場人物紹介”の欄が無い。だからヘンな奴が出てくるたびに“コイツはどの陣営に属しているのか”ということを確かめるため、前のページを参照することが多くなる。結果として、読むのにえらく時間が掛かってしまった。そのことを“面倒臭い”と思う読者ならば、敬遠しても当然である。
しかしながら、ロンドンみたいな歴史の古い町には、異世界への入り口がそこかしこに開いているという設定は面白い。これがアメリカの都市だったらサマにならないだろう(笑)。さらに、各キャラクターが“濃い”。“海”だの“タトゥー”だのといった、正体不明ながら何となく雰囲気が掴めるようなクリーチャーが遠慮会釈無く闊歩する様子は、ヴィジュアル的なイメージを刺激される(個人的には魔女めいた女刑事がもっと活躍してほしかったが ^^;)。映画化すれば快作に仕上がるかもしれない。
ミエヴィルには各アワードを獲得した「都市と都市」という代表作があり、機会があればそっちもチェックしてみたいと思った。
主人公のビリー・ハロウが案内人を務めるロンドンの自然史博物館の目玉展示物は、巨大なダイオウイカの標本である。ある日、ガイドとして客を引率していたビリーは、ダイオウイカの標本が水槽ごと忽然と消え失せているのを発見する。早速警察当局が捜査に乗り出すが、ビリーに接触してきたのは通常の肩書きの刑事ではなく、“原理主義者およびセクト関連犯罪捜査班”なる怪しげなセクションに属する捜査官達だった。
ロンドンの裏社会に跳梁跋扈する魑魅魍魎どもと関わるハメになってしまった男の冒険談で、作者はヒューゴー賞受賞の実績があるイギリスのファンタジー作家チャイナ・ミエヴィル。当初は標本盗難事件を巡るミステリーかと思わせるが、第1章の終わり付近で突然人間にあらざる異形のモノが登場して、これが幻想怪奇小説であることを認識した。
ただし、登場人物が多すぎる。ビリーを助ける者、敵対する者、あるいは常人の及びも付かない行動規範で勝手にストーリー上に出入りする者、それらが物語が進むにつれて幾何級数的に増えていくのだからやりきれない。しかも、外国文学の文庫版に添付されていることが多い“登場人物紹介”の欄が無い。だからヘンな奴が出てくるたびに“コイツはどの陣営に属しているのか”ということを確かめるため、前のページを参照することが多くなる。結果として、読むのにえらく時間が掛かってしまった。そのことを“面倒臭い”と思う読者ならば、敬遠しても当然である。
しかしながら、ロンドンみたいな歴史の古い町には、異世界への入り口がそこかしこに開いているという設定は面白い。これがアメリカの都市だったらサマにならないだろう(笑)。さらに、各キャラクターが“濃い”。“海”だの“タトゥー”だのといった、正体不明ながら何となく雰囲気が掴めるようなクリーチャーが遠慮会釈無く闊歩する様子は、ヴィジュアル的なイメージを刺激される(個人的には魔女めいた女刑事がもっと活躍してほしかったが ^^;)。映画化すれば快作に仕上がるかもしれない。
ミエヴィルには各アワードを獲得した「都市と都市」という代表作があり、機会があればそっちもチェックしてみたいと思った。