今年(2012年)はクロード・ドビュッシーの生誕150年に当たる。それを記念した新譜がいくつかリリースされたようだが、私が購入したのはピアノ曲の前奏曲集だ。第1巻と第2巻があるが、決して短い曲集ではないのでそれぞれ別のCDに収められているのが普通である。しかしこのピエール=ロラン・エマールによるディスクは1枚に収録されている。演奏時間も80分に達し、その意味でも“お買い得”と言えるだろう(笑)。
肝心のエマールのパフォーマンスだが、これはかなり上質である。この曲の代表的名盤といえばアルトゥーロ・ベネデッティ=ミケランジェリの艶っぽい演奏を思い出す向きも多いだろう。またサンソン・フランソワの才気迸るプレイや、ジャック・ルヴィエの透明感あふれる演奏も無視できないが、当ディスクはそれらに匹敵する出来だ。
タッチは実にナチュラル。余計なケレンは見あたらない。素材を微分的に突き詰めるような冷たさはなく、ストレートアヘッドで、なおかつたおやかな温度感が充満。原曲の旋律美を思う存分堪能できる。オーディオで言えば、B&Wのハイエンド型スピーカーのようだ(何のこっちゃ ^^;)。録音も素晴らしく、これは現時点でこの曲のスタンダードとなるディスクだろう。
グルジア出身の女流ヴァイオリニスト、リサ・バティアシュヴィリが20世紀の作品を中心に取り上げたアルバム「ECHO OF TIME(邦題:時の谺)」は2011年度のレコード・アカデミー賞(音楽之友社主催)の協奏曲部門を受賞した話題作だ。
収められている曲は、ショスタコーヴィチのヴァイオリン協奏曲第1番とカンチェリのヴァイオリン弦楽合奏とテープのための「V&V」、アルヴォ・ペルトの鏡の中の鏡、ラフマニノフのヴォカリーズ等だ。ヴォカリーズを除いて一般には馴染みのない曲ばかりだと思うが、いずれもロマンティシズムを前面に出した好演である。
特に感心したのがショスタコーヴィチのヴァイオリン協奏曲で、情感がこもっていて、なおかつクールという微妙な味わいを体感できる。バティアシュヴィリ自身がグルジアの動乱により家族とともにドイツに亡命していることからも、旧ソ連で抑圧される立場にあったショスタコーヴィチと通じるものがあるのかもしれない。共演のエサ=ペッカ・サロネン&バイエルン放響の演奏も素晴らしい。
ヴォカリーズ等ではエレーヌ・グリモーのピアノの好サポートを受け、まさに天翔るような技巧の確かさを認識することができる。録音も水準を超えており、幅広い層に奨められよう。
英国の異能ロッカー、フローレンス・ウェルチ率いるフローレンス・アンド・ザ・マシーンの2枚目のアルバム「セレモニアルズ」は、近年聴いたロック系アルバムの中では一番インパクトが高かった。ウェルチは間違いなくケイト・ブッシュやビョークあたりのポジションを継承しているミュージシャンだと思うが、そのサウンドは一度聴いたら忘れられないほど個性的だ。
いろいろなジャンルのサウンドを取り入れると共に、それを自家薬籠中のものにして重層化し、壮大な音のタペストリーを構築する。ヴォーカルは力強く、エレクトリカルなアレンジは秀逸。曲調はハードではあるが、多分にメロディアスだ。
とにかく、それぞれのナンバーが一本の大作映画のような密度を獲得しており、リスナーに対して軽く聴き流すことを許さない。アグレッシヴで強靱な内容の歌詞も要チェックだ。NMEアワードも獲得したこのバンド、次回作も楽しみである。
肝心のエマールのパフォーマンスだが、これはかなり上質である。この曲の代表的名盤といえばアルトゥーロ・ベネデッティ=ミケランジェリの艶っぽい演奏を思い出す向きも多いだろう。またサンソン・フランソワの才気迸るプレイや、ジャック・ルヴィエの透明感あふれる演奏も無視できないが、当ディスクはそれらに匹敵する出来だ。
タッチは実にナチュラル。余計なケレンは見あたらない。素材を微分的に突き詰めるような冷たさはなく、ストレートアヘッドで、なおかつたおやかな温度感が充満。原曲の旋律美を思う存分堪能できる。オーディオで言えば、B&Wのハイエンド型スピーカーのようだ(何のこっちゃ ^^;)。録音も素晴らしく、これは現時点でこの曲のスタンダードとなるディスクだろう。
グルジア出身の女流ヴァイオリニスト、リサ・バティアシュヴィリが20世紀の作品を中心に取り上げたアルバム「ECHO OF TIME(邦題:時の谺)」は2011年度のレコード・アカデミー賞(音楽之友社主催)の協奏曲部門を受賞した話題作だ。
収められている曲は、ショスタコーヴィチのヴァイオリン協奏曲第1番とカンチェリのヴァイオリン弦楽合奏とテープのための「V&V」、アルヴォ・ペルトの鏡の中の鏡、ラフマニノフのヴォカリーズ等だ。ヴォカリーズを除いて一般には馴染みのない曲ばかりだと思うが、いずれもロマンティシズムを前面に出した好演である。
特に感心したのがショスタコーヴィチのヴァイオリン協奏曲で、情感がこもっていて、なおかつクールという微妙な味わいを体感できる。バティアシュヴィリ自身がグルジアの動乱により家族とともにドイツに亡命していることからも、旧ソ連で抑圧される立場にあったショスタコーヴィチと通じるものがあるのかもしれない。共演のエサ=ペッカ・サロネン&バイエルン放響の演奏も素晴らしい。
ヴォカリーズ等ではエレーヌ・グリモーのピアノの好サポートを受け、まさに天翔るような技巧の確かさを認識することができる。録音も水準を超えており、幅広い層に奨められよう。
英国の異能ロッカー、フローレンス・ウェルチ率いるフローレンス・アンド・ザ・マシーンの2枚目のアルバム「セレモニアルズ」は、近年聴いたロック系アルバムの中では一番インパクトが高かった。ウェルチは間違いなくケイト・ブッシュやビョークあたりのポジションを継承しているミュージシャンだと思うが、そのサウンドは一度聴いたら忘れられないほど個性的だ。
いろいろなジャンルのサウンドを取り入れると共に、それを自家薬籠中のものにして重層化し、壮大な音のタペストリーを構築する。ヴォーカルは力強く、エレクトリカルなアレンジは秀逸。曲調はハードではあるが、多分にメロディアスだ。
とにかく、それぞれのナンバーが一本の大作映画のような密度を獲得しており、リスナーに対して軽く聴き流すことを許さない。アグレッシヴで強靱な内容の歌詞も要チェックだ。NMEアワードも獲得したこのバンド、次回作も楽しみである。