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Channel: 元・副会長のCinema Days
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「ぼくの家族と祖国の戦争」

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 (原題:BEFRIELSEN)これはかなり厳しい映画だ。第二次大戦中のエピソードの一つを取り上げた実録物だが、それだけでも戦争の理不尽さをイヤというほど印象付けられる。特に、戦況とヒューマニズムの相克という価値観が揺れ動く事象を、ある一家の行動を中心に描くという方法論は出色だ。ロバート賞(デンマーク・アカデミー賞)の各部門にもノミネートされている。

 第二次大戦末期の1945年、いまだドイツに占領されていたデンマークに、敗色濃厚なドイツから難民が押し寄せてくる。地方都市ノルドフュンも同様で、当地の市民大学の学長ヤコブは大勢の難民を学内に受け入れるようドイツ軍司令官に命じられる。だが、困窮している難民たちを助ければ周囲から裏切り者と見なされるのだ。とはいえ、何とか援助してやらなければ多くの難民が飢えや感染症で命を落とす結果になる。そんな中、ヤコブの12歳になる息子セアンは難民の少女と仲良くなるが、彼女は感染病に罹り危篤状態になってしまう。



 誰だって、困っている人々が目の前にいれば助けたくもなる。しかし、それが“敵国”の構成員ならばどうか。もちろん難民には罪は無い。だが、一方から見れば戦争の当事者であろうが無辜の市民だろうが、“敵国”に所属していることに関しては同じなのだ。主人公の一家は純粋に人道的立場から難民を支援する。しかし、それを利敵行為だと即断してしまう者たちは圧倒的に多い。そんな道理の通らないことを形成してしまうのが、すなわち戦争というものなのだ。

 脚本も担当したアンダース・ウォルターの演出は力強く、ヤコブたちが被る過酷な運命をドラマティックに描出する。特に、病気の少女を抱えてヤコブとセアンが病院に急ぐシークエンスの盛り上がりは素晴らしい。そして何より、いわば“自国の黒歴史”とも言える出来事を堂々と取り上げた果敢な姿勢には感服するしかない。

 ヤコブに扮するピルウ・アスベックは、状況に苦悩しながらも正しいと思う道を決然と歩くキャラクターを力演している。妻のリスを演じるカトリーヌ・グライス=ローゼンタールのソフトな雰囲気も良い。子役のモルテン・ヒー・アンデルセンをはじめラッセ・ピーター・ラーセン​、ペーター・クルトといったキャストは馴染みは無いが、皆良いパフォーマンスだ。ラスムス・ハイゼのカメラによる深みのある映像も要チェック。

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