Quantcast
Channel: 元・副会長のCinema Days
Viewing all articles
Browse latest Browse all 2422

「第21回九州ハイエンドオーディオフェア」リポート(その2)

$
0
0
 アナログレコードの復権が顕著になってかなりの時間が経っているが、今回も各社から意欲的なレコードプレーヤーの提案が成されていた。その中で目立っていたのは、神奈川県茅ヶ崎市の精密切削加工部品のメーカーである由紀精密が発売したAP-01だ。定価は429万円とかなり高いが、その構造とエクステリアは独創性が高く、専門誌のアワードも獲得している。

 モーターからトーンアームまですべて自社開発。シンメトリーレイアウト糸ドライブや永久磁石による非接触軸受など、マニア心をくすぐる仕掛けがフィーチャーされている。他社製品との聴き比べは叶わなかったが、安定した動作とスクエアーな音出しは、本機の性能の高さが十分窺われるものだ。そして何より、一見オーディオ業界とは関係なさそうな分野のメーカーがこのようなモデルを手掛けたというのは、興味深くも心強いものがある。



 70年代に米国西海岸に創設された高音質レーベルのモービル・フィデリティ社が、ハードウェア分野に進出して展開するMoFi ElectronicsブランドのレコードプレーヤーMaster Deck(定価110万円)も魅力的なモデルだった。仕上げがキレイなのはもちろん、そのトレース能力は恐ろしく高い。普通のプレーヤーでは演奏困難な反りが酷いディスクでも、楽々ドライブしてしまう。シビアな調整と整えられた動作環境が必須の高級プレーヤーも悪くはないのだが、レコードの状態をあまり気にせずに済む、こういう機器も貴重なものだ。

 ジャズシンガーのMAYAによるトークショーをはじめ、会場ではいろいろな出し物が用意されていたが、そのおかげか女性の入場者も目立つようになってきたのは喜ばしいことだ。もちろん、総入場者数としてはまだコロナ禍前の賑わいには戻っていないと思うが、今後も続けて欲しい。しかし、会場のロケーションは再考の余地があるのではないか。



 近年福岡市では“天神ビッグバン”や“博多コネクテッド”と銘打った都市再開発計画が進んでいる。最終的には100棟以上のビルが建て替えられるとのことだが、現時点でも催し場に十分使えそうなスペースを備えた大型ビルがいくつか竣工済だ。当然のことながら使用料は安くはないと思うのだが、オーディオ関係のイベントが幅広い層の目に留まれば、中長期的には新たな需要の創出に繋がるのではないだろうか。

 取り敢えずは、来年からの開催時期は従来通りの春期に戻るらしい。もちろん、都合が付けば私も足を運ぶつもりである。

(この項おわり)

Viewing all articles
Browse latest Browse all 2422

Trending Articles