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Channel: 元・副会長のCinema Days
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「カサブランカ」

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 (原題:Casablanca)1942年作品。言わずと知れたメロドラマの古典とされている映画だが、私は東宝系で展開されている“午前十時の映画祭”のプログラムの一つとして今回初めてスクリーン上で観ることが出来た。印象としては悪くない。特にハンフリー・ボガート扮する主人公の“ダメっぷり”には納得してしまう(笑)。

 1941年、ドイツの侵略によるヨーロッパの戦禍を逃れるため、中立国のポルトガル経由でアメリカへの亡命を図る人々が大勢いた。モロッコのカサブランカはその中継拠点である。ここでナイトクラブを経営するアメリカ人男性のリック(ボガート)は、陥落する前のパリで恋仲であったイルザと偶然再会する。

 かつて彼女はリックの前から理由も告げずに去ったのだ。久々に会う彼女はチェコスロバキア人のレジスタンス指導者ヴィクトル・ラズロの妻になっていて、何とリックと付き合っていた当時もラズロと結婚していたのだという。そんな中、ナチスから現地に派遣されてきたシュトラッサー少佐は、ラズロ夫妻に出国許可証が渡ることを阻止しようとする。

 リックはかつての“失恋”のショックから立ち直っておらず、彼の経営する店ではピアニストに彼女との思い出の曲は絶対弾かせない。それでもイルザに対して未練たらたらで、再会した後も何とかヨリを戻せないかとあれこれ悩むが、結局は“ダンディズム”という名の“やせ我慢”に走ってしまう。

 そもそも彼がカサブランカに居住し続けていたのは、いつかイルザに再会出来るのではないかという淡い期待があったからこそだ。この女々しさには失笑してしまうと同時に、共感もしてしまう。男というのは、そういう“場違いなロマン”に身を焦がしてしまうのだ(爆)。

 対してイルザの方は、何とも日和見的で感情移入しにくいキャラクターだ。演じるイングリッド・バーグマンのとびきりの美しさをもってしても、軽量級の扱いは免れない。だが、それは逆にリックの内面描写を引き立てる“小道具”として機能しているとも言える。

 戦時中に作られたプロパガンダ映画という側面はもちろんある。しかし、監督マイケル・カーティスは無粋なスローガンの連呼に走ることもなく、しっかりと娯楽映画の体裁を整えているあたりは好感が持てる。

 ボガートは個人的には後年の「黄金」や「アフリカの女王」みたいなワイルドな面を強調した役作りの方が好きだが、ここでのカッコつけた振る舞いも悪くはない。クロード・レインズやピーター・ローレ、ドーリー・ウィルソンといった脇の面子も的確な仕事ぶりだし、有名な劇中曲の使い方も言うまでもないだろう。

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