こういう映画は嫌いだ。日本映画のダメな面を如実に示しているのは、アニメーションの氾濫でも人気漫画の安易な映画化でもなく、はたまた若年層向けのラブコメ壁ドン作品の乱造でもない。本作のようなシャシンの存在と、それが悪くない評価を得てしまう現状だと思う。まあ、この手の映画は二本立て興行が普通だった昔の時代の“メインじゃない方の番組”だったら笑って許せたのだろう。だが、普通料金を取っての単独公開でこのレベルだと、まさに“カネ返せ!”と文句の一つも言いたくなる。
東京の一流企業で腕を振るっていた30歳代後半の近松優子は、理不尽なリストラに遭い実家がある兵庫県尼崎市に戻ってきた。直ちに定職に就くことなく日々を過ごしていた彼女だったが、ある日、町工場を経営している父親の竜太郎が再婚相手として20歳の早希を連れてくる。優子は戸惑うばかりで早希との仲も上手くいかない。そんな中、竜太郎が急逝してしまい、優子はいよいよ難しい立場に置かれることになる。
まず、設定自体がデタラメだ。仕事が出来て社内表彰も受けている優子を、会社が簡単に手放すはずが無い。たとえ実家に帰っても凄腕のキャリアウーマンの彼女ならば、関西圏で仕事はすぐに見つかるはずだ。竜太郎はロクに仕事もせず、業務は部下に任せきり。しかも、重要な工程は超ベテランの社員一人が担当していて、彼の後継者も育成していない。
そして最大の難点が、60歳をとうに過ぎたオッサンが20歳の若い女子からプロポーズされて結婚するという、有り得ない展開だ。こんな観る者をバカにしたような筋書きの果てに、終盤ではかつての阪神淡路大震災のエピソードを無理矢理挿入して“泣かせ”に走る始末。安手のテレビドラマでも採用しないような与太話である。
ところが、世評は良かったりするのだ。こんな軽量級で中身の無い人情話が受け入れられている現実。映画に大それたものを期待しておらず、肩の凝らない微温的なシロモノであればそれで良いという風潮こそが、邦画が低空飛行を続けている原因の一つではないのか。中村和宏の演出は凡庸で特筆すべきものは無し。優子に扮する江口のりこは奮闘はしているが、映画自体がこの程度では気の毒になってくる。竜太郎役の笑福亭鶴瓶は論外で、テレビでよく見る鶴瓶のまんまだ。映画に出ている意味が無い(若い頃の竜太郎に扮する松尾諭がずっと演じた方が良かった)。
早希を演じる中条あやみは悪くないパフォーマンスだが、彼女はすでに(現時点で)27歳で、しかも見た目が大人っぽいので、20歳というのは無理がある。中村ゆりに浜村淳、高畑淳子ら脇のキャストは印象に残らず、佐川満男はこんな映画が遺作になってしまったのは何ともやりきれない。あと、鶴瓶の身内である駿河太郎が出ているのも愉快ならざる印象を受けた。
東京の一流企業で腕を振るっていた30歳代後半の近松優子は、理不尽なリストラに遭い実家がある兵庫県尼崎市に戻ってきた。直ちに定職に就くことなく日々を過ごしていた彼女だったが、ある日、町工場を経営している父親の竜太郎が再婚相手として20歳の早希を連れてくる。優子は戸惑うばかりで早希との仲も上手くいかない。そんな中、竜太郎が急逝してしまい、優子はいよいよ難しい立場に置かれることになる。
まず、設定自体がデタラメだ。仕事が出来て社内表彰も受けている優子を、会社が簡単に手放すはずが無い。たとえ実家に帰っても凄腕のキャリアウーマンの彼女ならば、関西圏で仕事はすぐに見つかるはずだ。竜太郎はロクに仕事もせず、業務は部下に任せきり。しかも、重要な工程は超ベテランの社員一人が担当していて、彼の後継者も育成していない。
そして最大の難点が、60歳をとうに過ぎたオッサンが20歳の若い女子からプロポーズされて結婚するという、有り得ない展開だ。こんな観る者をバカにしたような筋書きの果てに、終盤ではかつての阪神淡路大震災のエピソードを無理矢理挿入して“泣かせ”に走る始末。安手のテレビドラマでも採用しないような与太話である。
ところが、世評は良かったりするのだ。こんな軽量級で中身の無い人情話が受け入れられている現実。映画に大それたものを期待しておらず、肩の凝らない微温的なシロモノであればそれで良いという風潮こそが、邦画が低空飛行を続けている原因の一つではないのか。中村和宏の演出は凡庸で特筆すべきものは無し。優子に扮する江口のりこは奮闘はしているが、映画自体がこの程度では気の毒になってくる。竜太郎役の笑福亭鶴瓶は論外で、テレビでよく見る鶴瓶のまんまだ。映画に出ている意味が無い(若い頃の竜太郎に扮する松尾諭がずっと演じた方が良かった)。
早希を演じる中条あやみは悪くないパフォーマンスだが、彼女はすでに(現時点で)27歳で、しかも見た目が大人っぽいので、20歳というのは無理がある。中村ゆりに浜村淳、高畑淳子ら脇のキャストは印象に残らず、佐川満男はこんな映画が遺作になってしまったのは何ともやりきれない。あと、鶴瓶の身内である駿河太郎が出ているのも愉快ならざる印象を受けた。