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Channel: 元・副会長のCinema Days
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「ゴッドランド GODLAND」

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 (原題:VANSKABTE LAND)映像の喚起力は素晴らしいものがあるが、肝心の映画の中身は密度が低い。物語の設定自体に無理があるし、加えて主人公の造型が説得力を欠く。撮影には2年が費やされ、たぶんそのプロセスも困難を極めたと思われるが、製作時の苦労の度合いは作品の出来に直接影響しないという定説を再確認することになった。

 19世紀後半のアイスランドに、デンマーク国教会の命を受けて布教の旅に赴いた若い牧師ルーカスは、現地の過酷な自然環境と通じない言語、そして慣れない異文化に直面して疲労困憊する。ようやく目的地の村に到着するものの、住民との確執を克服出来る見通しも立たない。やがて彼は、捨て鉢な行動に出る。



 当初、国教会の指令はアイスランドでキリスト教(ルター派)の布教を進め、それを踏まえて年内に教会を建てろというものだったはずだ。ところが、すでに彼の地では教会は建設中であり、ルーカスはその“開館時の担当者”として行っただけなのである。まったくもってこれは、単なる茶番ではないか。

 また、村の者からは“船で来た方がもっと行程は短くて楽だったはず”と言われてしまう。つまりルーカスは早くて安全なルートをあえて拒否して、わざわざ危険な道を選んだのである。しかも、無理に行程を急いだ挙げ句に通訳を事故死させてしまう。そのおかげで彼は難儀するのだが、かくもバカバカしい筋書きには呆れるしかない。

 村に着いてからのルーカスの奇行と住民たちとの軋轢に関しても、観ている側との心情的な接点が存在せず、どうでもいい感想しか持てない。監督のフリーヌル・パルマソンは脚本も担当しているが、その出来映えをチェックするスタッフはいなかったのだろうか。

 とはいえ、マリア・フォン・ハウスボルフのカメラがとらえたアイスランドの大自然は圧巻だ。絶景に次ぐ絶景で、これが果たして地球上の風景なのだろうかと驚くしかない。四隅が丸い変型のスタンダードサイズの画面も効果的だ。しかし、それしか売り物が無いのならば自然の風景のみを紹介したドキュメンタリーでも良かったわけで、ヘタなドラマをそれに載せる必然性など見出せない。

 主演のエリオット・クロセット・ホーブをはじめ、イングバール・E・シーグルズソン、ヴィクトリア・カルメン・ソンネ、ヤコブ・ローマンなどのキャストは熱演だが、その健闘が報われたとは言い難い。なお、似たような設定のドラマとして、私はローランド・ジョフィ監督の「ミッション」(86年)を思い出した。あれも作劇には幾分無理はあったが、全編を覆う強烈な求心力に感じ入ったものだ。もっとも、あれはカトリックの伝道師の話だったので、プロテスタントの聖職者を主人公とした本作とは勝手が違うのかもしれない。

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