これは是枝裕和監督の「海街diary」(2015年)と似たような線を狙っていたのかもしれない。しかし、出来としては凡庸だった是枝作品にも及ばないほど低調な仕上がりだ。聞けば本作の当初の脚本は、そのまま映像化すれば4時間にも及ぶ“大作”だったとか。それを無理矢理に2時間弱に圧縮した弊害が出ているのかもしれない。いずれにしろ、評点は辛いものになる。
東京で女優として活動していた28歳の小山田響子は、体調を崩したこともあり仕事を辞めて福岡市に移住する。実は彼女には本橋菜穂子という腹違いの妹がいるのだが、響子は菜穂子の存在を知らない。菜穂子は偶然を装って響子に近づき、招かれた彼女の部屋でこっそり連絡帳から情報を盗み出す。響子の実家は佐賀県嬉野市なのだが、そこに書かれていたのは伯母の芙美子の電話番号だった。芙美子は高校生の小暮杏奈を引き取って育てているが、杏奈は響子と菜穂子の異母妹である。
それまで交流が無かった三姉妹の人間模様を描こうという方向性は悪くなく、上手くやれば「海街diary」よりもヴォルテージの高い内容になったかもしれないが、話自体がまるでダメである。まず、主人公たちの父親は相当な放蕩者であったことが想像できるが、映画はその点に関してまったく言及されていない。三姉妹はもちろん、親戚や周囲の者たちも多くを語らないのだ。
そして、菜穂子は確たる理由も無く響子をストーキングする。姉に何かコンプレックスを持っているというわけでもなく、終盤には唐突にヤバい行為に走る。響子の元カレである宗太郎や、菜穂子の友人たちも存在理由が希薄。村の“長老”とされているオッサンも、何しに出てきたのか分からない。
極めつけは、終わり間際に展開する謎すぎるエピソードの数々。いつの間にかヤクの売人がどうのこうのという流れになり、警察が介入する事態になったと思ったら、芙美子はヘンなところで退場してしまう。脚本も担当した夏都愛未の演出は行き当たりばったりで、求心力はほぼゼロ。そもそも、この企画を通したプロデューサーの意図が見えない。
響子役の松井玲奈は今回は演技指導が不十分だったためか、身体の動きも表情も硬い。菜穂子に扮する岡崎紗絵のサイコパスぶりも取って付けたよう。杏奈を演じる倉島颯良をはじめ、草川直弥に川添野愛、松林うらら、林裕太といった顔ぶれも“華”に欠ける。カトウシンスケと黒沢あすかの働きもイマイチだ。福岡市内や嬉野の風景はよく出てくるが、さほど効果的ではない。
東京で女優として活動していた28歳の小山田響子は、体調を崩したこともあり仕事を辞めて福岡市に移住する。実は彼女には本橋菜穂子という腹違いの妹がいるのだが、響子は菜穂子の存在を知らない。菜穂子は偶然を装って響子に近づき、招かれた彼女の部屋でこっそり連絡帳から情報を盗み出す。響子の実家は佐賀県嬉野市なのだが、そこに書かれていたのは伯母の芙美子の電話番号だった。芙美子は高校生の小暮杏奈を引き取って育てているが、杏奈は響子と菜穂子の異母妹である。
それまで交流が無かった三姉妹の人間模様を描こうという方向性は悪くなく、上手くやれば「海街diary」よりもヴォルテージの高い内容になったかもしれないが、話自体がまるでダメである。まず、主人公たちの父親は相当な放蕩者であったことが想像できるが、映画はその点に関してまったく言及されていない。三姉妹はもちろん、親戚や周囲の者たちも多くを語らないのだ。
そして、菜穂子は確たる理由も無く響子をストーキングする。姉に何かコンプレックスを持っているというわけでもなく、終盤には唐突にヤバい行為に走る。響子の元カレである宗太郎や、菜穂子の友人たちも存在理由が希薄。村の“長老”とされているオッサンも、何しに出てきたのか分からない。
極めつけは、終わり間際に展開する謎すぎるエピソードの数々。いつの間にかヤクの売人がどうのこうのという流れになり、警察が介入する事態になったと思ったら、芙美子はヘンなところで退場してしまう。脚本も担当した夏都愛未の演出は行き当たりばったりで、求心力はほぼゼロ。そもそも、この企画を通したプロデューサーの意図が見えない。
響子役の松井玲奈は今回は演技指導が不十分だったためか、身体の動きも表情も硬い。菜穂子に扮する岡崎紗絵のサイコパスぶりも取って付けたよう。杏奈を演じる倉島颯良をはじめ、草川直弥に川添野愛、松林うらら、林裕太といった顔ぶれも“華”に欠ける。カトウシンスケと黒沢あすかの働きもイマイチだ。福岡市内や嬉野の風景はよく出てくるが、さほど効果的ではない。