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Channel: 元・副会長のCinema Days
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「マッシブ・タレント」

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 (原題:THE UNBEARABLE WEIGHT OF MASSIVE TALENT )アクションコメディとしては凡庸で、敢えてコメントするほどのレベルではない。しかし、あのニコラス・ケイジが現実のケイジ自身を彷彿とさせる映画スター(?)をヤケクソ気味に演じるという設定は効果的で、それほど退屈しないで最後まで観ていられる。こういうシャシンもあっていい。

 かつては売れっ子で主要な映画アワードの受賞歴もある俳優ニック・ケイジは、今では落ちぶれて多額の借金を抱える身だ。しかも嫁さんには逃げられ、娘にも愛想を尽かされている。そんな彼に、スペインの大富豪の誕生日パーティに参加するだけで100万ドルが得られるという、実にオイシイ仕事の依頼が来る。



 胡散臭さを感じながらも借金返済のためにスペインまで足を運んだ彼を迎えたのは、パーティの主賓でニックの大ファンであるという大金持ちのハビ・グティエレスだった。彼の大らかな人柄に惹かれたニックはすぐに意気投合するが、そんな中、ニックはCIAの幹部からある依頼を受ける。実はハビは国際的な犯罪組織の首領らしく、彼の動向をスパイしてほしいというのだ。

 この一件の裏にはカタロニアの政治家の娘が誘拐され、ハビが所有する広大な敷地のどこかに監禁されているという背景があるのだが、それほど効果的には扱われていない。そもそも監督トム・ゴーミカンの腕前がイマイチで、面白そうなシチュエーションは用意されているものの、演出のテンポが悪くサスペンスもギャグもキマらない。また、後半ニックの妻子もスペインに来てしまうという筋書きは彼女たちの“活躍”を挿入するためとはいえ、無理矢理感が強い。

 それでも何とかスクリーンに対峙できたのは、ニコラス・ケイジのセルフ・パロディが満載だからだ。誘拐される娘が観ているたのが「コン・エアー」で、以下「フェイス/オフ」や「ザ・ロック」、「月の輝く夜に」、「コレリ大尉のマンドリン」、「ゴーストライダー」等々、ニコラス御大のネタが性懲りもなく出てきて、それだけでもニヤついてつまう。果ては彼の“心の声”を象徴する謎なキャラクターが登場し、興趣は高まるばかり。

 キャストではハビ役のペドロ・パスカルが絵に描いたような好漢ぶりでインパクトが高く、シャロン・ホーガンやアイク・バリンホルツ、ティファニー・ハディッシュ、リリー・シーンらのパフォーマンスも良好。音楽担当はマーク・アイシャムで、ライト過ぎる作劇にはもったいないほどの堅実なスコアを提供している。

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