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Channel: 元・副会長のCinema Days
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「もう、歩けない男」

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 (原題:ADAM)悪くはないが、それほど良くもないという出来の映画だ。実話を元にした“難病もの”の体裁を取り、それなりのルーティンをなぞってソツなく仕上げているように見えて、大きなインパクトは受けない。実録作品であることに寄りかかり、観る者を惹き付ける工夫が疎かになったような案配だ。ただ、キャストの奮闘に関しては評価は出来る。

 ミシガン州在住のアダム・ニスカーは、勤め先の保険会社で実績を上げ、恋人のクリスとの結婚も間近で、立派な一軒家も手に入れてまさに人生は順風満帆だった。しかし新居を祝うパーティの最中に酔った弾みで池に頭から飛び込み、脊髄損傷で半身不随になってしまう。すべてが暗転した状況の中でアダムは自暴自棄になるが、家族やリハビリ施設の仲間、そして型破りなヘルパーらの支えにより徐々に自分を取り戻していく。



 同様のシチュエーションの映画は過去にいくらでもあるのだが、本作が特段優れているわけではない。そもそも、アダムの境遇は随分と恵まれている。クリスは離れてしまうが、元々有能なビジネスマンであった彼にはそれなりの蓄えがあり、元の上司からは復職を打診されたりする。両親は健在で経済面での不安は無く、兄は無能だが根は良い奴で決して主人公の足を引っ張ることはない。

 言い換えれば、これらの有利な条件の一つか二つ欠けるだけでもアダムの再起は困難になるのだ。いくら実話だと言っても、映画の内容としては普遍性に関して疑問が残る。筋書きは型通りで、ロシア系介護士のイフゲニアの思い切った言動こそ印象的だが、それ以外はあまり感心出来るところは無い。

 そういえばこの映画、製作年度こそ2020年だが、撮影は2010年に完了している。だから何となく新作として向き合うには不自然な雰囲気で、そもそもどうして10年ほども手付かずのままだったのか分からない。マイケル・アッペンダールの演出は可もなく不可もなしで、映像や作劇における特段の工夫も見受けられない。

 主役のアーロン・ポールは好演。脇にレナ・オリンやセリア・ウェストン、トム・サイズモア、トム・ベレンジャーらベテランや実力派を配し、クリス役のシャノン・ルシオはエロ可愛い(笑)。しかしながら映画のクォリティがイマイチなのでアピール度は高くない。それにしても、酒に酔って無鉄砲な行動に出るとロクなことにならないのは確かだ。気を付けねばならない。

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