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Channel: 元・副会長のCinema Days
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「42 世界を変えた男」

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 (原題:42)薄味かつ大味な映画だ。ただ考えてみると、こういう偉人伝を扱ったハリウッド映画において納得できるものに出会ったことはあまりない。ひょっとすると企画前の段階で“この人は実にエラかった”という定説が確定してしまい、映画独自の視点で掘り下げる余地がないのかもしれないが、いずれにしても凡作だ。

 メジャーリーグ初の黒人選手であったジャッキー・ロビンソンの伝記映画。1947年、ドジャースのゼネラル・マネージャーであるブランチ・リッキーは、新戦力を求めて黒人リーグの選手達に目を付けた。その中でガッツ溢れるプレイで人気を博していたジャッキー・ロビンソンを選出し、入団させる。

 しかし当時の人種差別は激しく、ジャッキーにとって苦難の日々が続く。球場の入場口はもちろん、公衆トイレなども黒人と白人とは別。ジャッキーが打席に入ると、聞くに堪えない罵声がスタンドや相手チームから浴びせられる。デッドボールを故意にぶつけられるのも珍しくはない。こんな理不尽なことが、ほんの数十年前まで行われていたとは、何ともアメリカというのは野蛮な国だ。

 今では彼が付けていた背番号“42”は全チーム共通の永久欠番になり、偏見は無くなったような雰囲気ではあるが、表立った差別が見られなくなっただけで実際はエゲツないことが陰で行われているのだろう。

 映画は辛酸を舐めていた主人公が次第に周囲の理解を得て、チームの主力としての地位を得るまでを淡々と描く。観る者のハートを鷲掴みにするような激しいパッションも、登場人物が抱くヒリヒリするような苦悩も、まったく見られない。ただ事実を漫然と羅列していくだけだ。ブライアン・ヘルゲランドの演出は凡庸そのもので、作劇にメリハリを付けるということを知らないかのようだ。

 さらに困ったのは、試合のシーンが面白くないこと。カメラワークもカット割りも落第。ケレン味を効かせて盛り上げるべき箇所が平板な展開に終始してしまうのは、実にやりきれない。

 主演のチャドウィック・ボーズマンは面構えは良いが、それを活かすような演出が不在であるため手持ち無沙汰の感さえある。妻レイチェルを演じるニコール・ベハーリーも可愛いけど大した見せ場を与えられていない。

 唯一目立っていたのがブランチ・リッキーに扮するハリソン・フォードで、この海千山千のキャラクターを貫禄たっぷりに演じている。ただし、内面にまで踏み込んでくるような部分はなく、もっと上手い監督ならば、さらに存在感は増したと思われる。時代考証とマーク・アイシャムの音楽だけは万全だが、全体的にあまり積極的に評価したくなるようなシャシンではない。

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