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Channel: 元・副会長のCinema Days
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「君だけが知らない」

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 (英題:RECALLED)それほど深味は無いとは思うが、トリッキィな筋立てで最後まで飽きさせない。最初は映画自体のジャンルを確定させるような建付けに見せかけて途中から別の方向性を示してくるあたり、かなり工夫されていると思う。そして何より、主演女優の魅力が圧倒的。観て損は無い韓国製サスペンスだ。

 若い人妻キム・スジンは病院のベッドで目を覚ます。登山中に滑落事故に遭い昏睡状態にあったらしいが、記憶喪失に陥っており詳細は思い出せない。それでも夫のイ・ジフンの献身的なサポートのおかげて回復に向かい、退院後は元の日常を取り戻し始める。ところが、次第に幻覚に悩まされるようになる。その幻覚は予知夢に近く、実際に彼女の周囲に不可解な出来事が頻発。さらには殺人事件をイメージした幻覚の通りに死体が発見されるに及び、彼女の身にも危険が及んでくる。



 予知夢という超自然的なモチーフをまず提示し、オカルト方面への展開を匂わせて、実はそうでもないという凝った筋書きは悪くない。真相はヒロインの生い立ちに関係しているというネタも、韓流ドラマにはありがちな要素ながら(笑)特に扇情的な扱いはされておらず、さほど気にならない。

 これが長編デビュー作となる女性監督ソ・ユミン(ホ・ジノ監督の門下らしい)はいわゆる“映像派”ではないようで、ヴィジュアル的なギミックは控え目だ。あくまでストーリーを堅実に積み上げることを優先する“職人派”なのだろう。そのため良い意味でのケレンが少なく、真に登場人物の心の闇を垣間見せるようなタッチは見られない。その代わり、テンポのいいドラマ運びとスムーズなアクション演出が披露されている。1時間40分という、無駄に長くはない尺に収めているのも評価できる。

 主演のンソ・イェジは初めて見る女優だが、整った容姿と内省的な演技はもとよりその“声”には参ってしまった。ハスキーな、まさに魅惑の低音ボイス。これだけ特徴的な声を持ち合わせているのは、俳優としては大きなメリットだろう。聞くところによると、私生活(特に経歴)ではかなり問題のある人物らしいが、本作を見る限り今後の仕事にも注目したくなる。共演のキム・ガンウ、パク・サンウク、ソンヒョクらも申し分ない。

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