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Channel: 元・副会長のCinema Days
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「マイ・ボディガード」

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 (原題:My Bodyguard)80年作品。教育現場ではいまだに深刻であるイジメ問題については、私はかねてよりイジメられた側は逃げるべきだとの意見を持っている。もちろん対策は個々のケースで打ち出すべきだが、まずはイジメの現場から離れることが肝要だ。しかし本作はアメリカ映画らしく、とにかくイジメには果敢に立ち向かえという主張を展開している。もちろんこのテーマ自体には賛成できない。だが、そこを観る側に気を使わせずにエンタテインメントとして昇華させているのは、映画としては評価すべきだろう。

 15歳のクリフォード・ピーチは、家庭の事情により私立高校からシカゴ市内の公立校に転校する。ところがそこはいわゆる“底辺校”で、不良どもがのさばっていた。さっそくクリフォードはリーダー格であるムーディとその子分どもに目をつけられ、イジメの標的にされてしまう。一計を案じた彼は、同じ学校の生徒で一匹狼のタフガイであるリッキー・リンダーマンにボディーガードになってくれるよう頼む。リッキーはかつて弟を射殺したという噂が流れており、ムーディたちもビビッて近付くことさえできない。はじめは断固として拒否していたリッキーだが、徐々にクリフォードに心を開いてゆく。



 リッキーの造形が秀逸だ。一見無口でガサツな大男ながら、内面は誰よりも繊細でデリケート。辛い過去を周囲の者たちに打ち明けられずに、結果として孤立を招いている。それが真剣に接してくるクリフォードに触発され、徐々に自身の人生に向き合うようになってくる過程には説得力がある。

 クリフォードは辛い立場に置かれるものの、逃げようとは微塵も思わない。他のイジメられっ子たちも同様で、泣き寝入りするどころか自らの境遇をジョークで笑い飛ばそうとする。やがてクリフォードは、リッキーの助けを借りずに自力で事態を打開しようと考える。現実にはそう上手く行くわけがないのだが、弱い者が友情を得て奮起し、堂々と戦いに挑むという娯楽映画のルーティンを踏襲しているために気にならない。

 トニー・ビルの演出は実に手堅く、しっかりとドラマを引っ張る。ナイーヴな持ち味のクリフォード役のクリス・メイクピースも良いのだが、やっぱリッキーに扮するアダム・ボールドウィンのパフォーマンスが目覚ましい。彼らがバイクで街を走るシーンは高揚感が横溢する。ムーディを演じるマット・ディロンの太々しさも特筆もので、彼のキャラクターはこの頃確立されたと言っても良い。

 ルース・ゴードンにジョン・ハウスマン、ジョーン・キューザックといった他のキャストも良い味を出しており、デビュー間もないジェニファー・ビールスが顔を出しているのは興味深い。音楽担当は名手デイヴ・グルーシンで、さすがのスコアを提供している。

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