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Channel: 元・副会長のCinema Days
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「アムステルダム」

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 (原題:AMSTERDAM )題材は目新しく、キャストは豪華。美術や衣装は凝っており、撮影も申し分ない。それにも関わらず、映画としては面白くない。これはひとえに、脚本と演出の不備に帰着する。実話を元にしているとのことだが、何やら“実録物である”ということを“言い訳”にして、出来の悪いドラマ運びを漫然と披露しているだけのように思う。

 1930年代のニューヨーク。医者のバートと看護師のヴァレリー、そして弁護士のハロルドの3人は、かつて第一次大戦下のアムステルダムで一緒の時間を過ごし、親友同士として末永く付き合うことを誓い合った仲だった。ところがある日、ハロルドの依頼人であるリズが何者かによって殺され、しかもバート共々容疑者に仕立て上げられてしまう。彼らは疑いを晴らすべく奔走するが、やがてこの事件の裏にある巨大な陰謀に行き着くことになる。



 本作がどこまで史実をトレースしているのか分からないが、随分と雑な建て付けだ。主人公たちが被る冤罪に関しても、衆人環視のもとで発生した案件でそう易々と濡れ衣を着せられるわけがない。このトラブルがどう解決するのか、その段取りには別に驚くようなトリックがあるわけではなく、そもそもサスペンスを盛り上げようという意思も感じられない。

 終盤の当局側責任者の演説も、普通の映画ならばカタルシスを用意するように動くのだが、この映画は空振りだ。よく考えれば、ここで取り上げられている“陰謀”も大したものではない。ハッキリ言って、実現不可能な与太話だ。デイヴィッド・O・ラッセルの演出はヘンにコメディ方面に振ったり、あるいは撮り方のタイミングをちょっとズラしたりと、やってる本人は気が利いていると思っているのかもしれないが、観ている側としてはイライラするだけだ。「世界にひとつのプレイブック」(2012年)の頃までのタッチを維持して欲しかった。

 主役3人はクリスチャン・ベール、マーゴット・ロビー、ジョン・デイヴィッド・ワシントン、そしてクリス・ロックにアニャ・テイラー=ジョイ、ゾーイ・サルダナ、マイク・マイヤーズ、ラミ・マレック、ロバート・デ・ニーロ、さらにはテイラー・スウィフトなど、キャスティングは実にゴージャス。エマニュエル・ルベツキのカメラによるノスタルジックな映像、ダニエル・ペンバートンの音楽も万全だ。しかしながら、映画の質が斯くの如しなので無駄足に終わっている感が強い。

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